ニッポン 旧ユーゴ 虐殺 国連 その他










Balkan Justice

The Story Behind the First International War Crimes Trial Since Nuremberg   

by Michael P. Scharf





この本は、あるボスニア・セルビア人男性に触れながら、国際人道法、ニュルンベルグ・東京の国際法廷、旧ユーゴ内戦、そして旧ユーゴの国際法廷について書かれている。

追記:この本はピューリッツァー賞にノミネートされたそう。

ある男性とは、写真の人ですが、Dusko Tadic(発音はダスコ・タジッチ?不明なのでアルファベットのままで)という名前。この人はダスティン・ホフマンに似てるので(似てるか?)欧米メディアでは「Dustin Hoffman look-alike」(ダスティン・ホフマン似)と呼ばれていた。Tadicは一番最初に旧ユーゴ法廷で裁かれた人。40数年ぶりに個人が国際的に裁かれる。歴史的な出来事。その一番最初の人。

なぜ、いきなりこの本とこのオッサン?なんですが、すごい印象に残った本なんですわ。いろんな意味で。エグイ描写が多いというのもその理由なんだけど、やはり、このDusko Tadicというオッサンがすごい気になった。人間として、そして日本人として。


なにを隠そう、いや、隠すもへったくれもないんだけど、このDusko Tadicは空手家でした。日本にも何度か来たことがあるらしい。そして、このオッサンはボスニアの田舎でカフェを経営していた。この本を読んでるとき、不謹慎にも、「ぷっ」と吹き出してしまったのだが、このカフェの名前が、なんと・・・・・・「nippon」・・・。

だからどうした?なんですけどね。ちなみに、ちょっと検索してみたら、ニューヨークタイムスの記事がありました。Tadicは空手を教えてもいたようですね。


Tadic owned the Nippon Cafe and taught karate, holding a black belt himself.

(Tadicはニッポン・カフェを経営し、空手を教えていた。彼自身、黒帯び。)

ニューヨークタイムス 5/8 1996 http://www.nytimes.com/specials/bosnia/context/0508yugo-war-crimes.html

この記事によると、Tadicは31もの犯罪で起訴されたようですね。収容所でのムスリムの人たちに対する迫害、レイプ、拷問、虐殺等で。この記事は裁判開始、約40数年ぶりの国際法廷の始動についてですが、旧ユーゴ法廷のHPによると、Tadicは裁判の結果、人道に対する罪と戦争法規違反で有罪になり、20年の禁固刑になったようです。


で、何がキツイかって、このオッサン、もともとはそんな悪い人じゃなさそうなんだよね。↑の本によると、戦争前はナイスな普通のオッサンだったらしい。経営するカフェにも、近所のムスリムの人たちが来ていたそうだし、そういう人たちと仲良くやってたようだ。ホーム・パーティなんてのもムスリムの人たちとやってたそうだし。↑のニューヨークタイムスの記事にはこう書いてある↓

The prosecutor said that as Serbian nationalism spread, Tadic joined the police, turned against his Muslim friends

(検察官によると、セルビア・ナショナリズが叫ばれるようになると、Tadicは警察官になり、ムスリムの友人たちに敵対するようになった)


こういう話って、このオッサンだけじゃないんだよね。ボスニア戦争ではあっちこっちにそういう話が出てくる。日常の実感ってそんなに弱いものなの?民族主義の幻想ってそんなにすごい魔力を持っているのかねえ。普段からイガミあってたならまだしも、日常では穏やかにやってたはずだったのに。そりゃ、いわくつきの歴史があったとしてもさあ。何十年も普通にやってたじゃんよと。

ナショナリズムの底知れぬパワーに背筋が寒くなる。


ちなみに、あの戦争は宗教戦争か民族戦争かいろいろ見解が分かれるけど、知り合いのあの戦争を体験したボスニア出身のクロアチア人は、民族戦争だと断言してた。たしかに、クロアチア人・セルビア人・ムスリムは宗教が違うだけで、人種その他は一緒なんで、なぜに宗教戦争じゃなくて民族戦争なん?ってのはややこしい話なんだけど。まあ、現地の人たちの感覚では、宗教が違う人たちってより(実際、宗教は違うけど)、ちょっと違う人たち=違う民族、って感じらしい。


で、このTadicですが、ムスリムのお友達がたくさんいたのでムスリムのことをよく知っていた。そして、ムスリムが何を嫌がるかも当然。よって、彼やその他の人たちの働く悪事(=遊び)の酷さはもう・・・。 ↑のニューヨークタイムスの記事にもマイルドな話がちょっとだけ出てるけど。ちなみに、↑の本は、「噛み切れ!噛み切れ!」ではじまる。神経図太い人はニューヨークタイムスの記事と関連させてみてください。なんのことだかわかります。(追記:エグイ話は「日本人の劣等感と優越感? & 欧米リベラル」のコメント欄でちょっとだけ「あえて」書いた。)



というか、空手の先生でカフェ・ニッポンのオッサンがそんな酷いことやっちゃったんですよー!?

大のニッポンびいきのオッサンがですよー!?


というか、旧ユーゴ戦争・法廷関連の本・論文たくさん読んだんだけど、もうめちゃくちゃ。↑のニューヨークタイムスの話なんてマイルドもなにもちょーマイルド。そういうの読んでる俺ってヘンタイかよ!?とか思った。ありえねーだろ、って話がゴロゴロゴロゴロゴロ。この世のものとは思えないような話が。つか、人間って最悪。



友人に、国連部隊としてボスニアにいたことのある人がいた。この人はスウェーデンの元軍人。彼によると、国連部隊の目の前で、ムスリムの人たち、女性や子どもやお年寄りが狩られてたそうだ。国連部隊に泣きながら助けを求める人々が、目の前で連れて行かれ、虐殺されていたそうだ。

そのときの国連部隊のマンデイトでは、そういう人たちを助けることはできなかった。で、そのミッションの最高責任者が明石康さん。日本じゃ、明石さんは英雄だけど、欧米や向こうじゃ評判悪い。というか、最低のミッションの責任者だったということで。まあ、彼の力でどうこうできたわけじゃないからかわいそうなんだけど。後に戦争犯罪者になるボスニアのリーダーたちと、やる気のない国連安保理バックに、彼もツライ思いで交渉してたんでしょう。

この戦争を扱った映画でも、そんなシーン(=国連部隊が助けを求める悲惨な人々を見捨てる)が出てきたりする。「ノーマンズ・ランド」にもあったような。題名忘れたけど、BBC(たぶん)が作ったテレビ映画観たことあるんだけど、そういうシーンがたくさん出てきた。元国連部隊の彼曰く、「まさにあんな感じだった」。悲惨すぎ。そいつ、映画観ながら泣いてたよ。マジ悲惨。

国際社会、何やってんだよ!バカヤロー!だ。そんなに国家主権が大事か!コノヤロー!だ。

もちろん、国家主権の問題はそんな単純な話じゃないんだけど。国家主権を侵して介入するときはインチキな理由つけてやるもんだし。人道的理由、と言いながらやるもんだし。

けどねえ、そういう話をミクロで知っちゃうとねえ。キツイんだよねえ。ルワンダもそうだけど。

憲法9条もイロアセちまう。9条の精神は、他所でそういうことあっても放っとけ、だから。俺が9条について迷いまくりなのはこのせい。ナイーブであまちゃんなせい。はっきり言って、9条は冷徹なリアリズムですよ。(憲法9条改定論議の整理)


ところで、旧ユーゴの辺りの風景って、なんか日本の風景に似てたりする。写真・映像でしか見たことないけど。


ちなみに、↑のニューヨークタイムスの記事に出てくる旧ユーゴ法廷の裁判官、Gabrielle Kirk McDonald さんはアメリカの黒人女性で、後に旧ユーゴ法廷の所長になりました。そして、なんと、あの「女性国際戦犯法廷」の裁判官でした。(この人も北朝鮮の工作に引っかかっちゃったのかな(笑)。安倍さんに言わせると、そうなんでしょうねえ。他にも旧ユーゴ国際法廷や国際刑事裁判所の裁判官だった人やアドバイザーだった人が女性国際戦犯法廷に関わってたようです。うーん、北朝鮮の工作はすごいっすねえ。)

女性国際戦犯法廷は旧ユーゴ・ルワンダ法廷や国際刑事裁判所と同じような理念で、ようするに国際人道法の常識でやってたってことが推測できる。国際法廷の裁判官なんて、世界中の国が同意するような人間なんだから。国連総会承認だし。もちろん旧ユーゴ・ルワンダ法廷にも問題はある。国連設置だけど、勝者の裁きでもある。勝者の犯罪は裁かれない。そして、もちろん日本は裁く側。日本人の裁判官もいた。

追記:旧ユーゴ法廷の裁判官や所長の決め方は、ややこしいので、興味のある方は↓をどうぞ。

STATUTE OF THE INTERNATIONAL TRIBUNAL



追記:そーいえば、思い出したんだけど、著者のMichael P. Scharfは国際人道法の専門家で、国際法廷設立のための安保理決議をアメリカ国務省で書いたスタッフだったような。(彼のHPによると、国務省の元アドバイザー。)
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by mudaidesu | 2005-10-03 01:50 | 世界


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