「ネットで広がる愛国心」 by 筑紫哲也のNEWS23 


この前、「筑紫哲也のnews23」の愛国心特集で「ネットに広がる愛国心」みたいなのをやってました。このブログでも、ことあるごとに、映画などの話でもこじつけるようにして、「愛国」や「ナショナリズム」について書いてきました。というか、最近、これ系のネタばかりのような気もする。前回も靖国だし。まあいいや。そんなわけで、このネタについてもちょっと書いときます。といっても、この番組の裏(日テレ・フジ・テレ東)で、ロッテ優勝をやってたのでチャンネルをカチャカチャやりながら見たんだけど・・・。


内容は、二人の「ネット愛国者」の生活を追い、彼らの考えを聞く、というもの。一人は、ケーキ工場で働くフリーターの「愛国者」。もう一人は、投資銀行に就職し「勝ち組」になり、お金を稼ぎたいという「愛国者」。二人とも、日本の「弱腰外交」に憤る。日本が弱いと嫌で、日本が強かったら気持ちがいいのに、みたいな感じ。部屋にはお約束で、あれ系の本が。












二人とも、自分の将来が「不安だ」と正直に告白している。そして、日本が強くなれば、自分も強くなった気になる、みたいなことを正直に言っていた。この「強さ」とは、「文句を言われない」「文句を言える」ということ。中韓相手にでしょう。

どう見ても、この二人が世間の人々のロールモデルとなることはないだろう。テレビを見た人びとが羨望の眼差しで、この二人を見ることはないだろう。

しかし、僕はこの二人に好感を持ちました。コイツラは正直者だと、素直なヤツラだと思った。もしかしたら、コイツラもネットで他人に嫌がらせをしてるのかもしれない。しかし、「筑紫哲哉の番組」に撮られ、料理されることに同意し、遠慮がちながらもホンネを吐露する彼らは、それなりに立派だと思った。勇気があると。というか、僕にはそんな度胸はない。この二人は純粋なんだろうと。嫌がらせなどはしていないと信じたい。コイツラの姿は、僕の好きな憎めない気の弱い日本人そのものだと思いましたよ。そういう日本人が嫌いじゃない。

というかね、中韓うるせーなー、ダマレヨ、みたいな気持ちってそんなに特殊なもんじゃない。僕だって、昔、そう感じてたことありますもん。子どもでしたけど、そのころ保守論壇の議論読んでたら、すっかり感化されちゃってた可能性は否定できない。僕みたいな人、他にも結構いるんじゃないですか?


で、筑紫さんの番組ですが、分析はまったく正しい。不安になった個人が、自己のアイデンティティを国家に投影してるという分析。まったくそのとおりだし、実際、テレビに出た二人も自分自身でそう言っていた。












小熊英二・上野陽子の「癒しのナショナリズム」で描写された、「つくる会」の会合に集まる人々とまったく同じ。というか、エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」その他のナショナリズム研究の通り。社会の中の様々な共同体が崩壊し、個人の何かに帰属したいという欲求が満たされない。一人じゃツライ・不安という気持ち、そういうのから、中間(過去の日本なら、企業とか地域とか)をすっとばして一挙に国家へ、という構図。個人のアイデンティティの拠りどころが国家だけ、みたいな。ありふれた図式。












ある「自称ネット右翼」の人が、この番組を見て、「左の人はどうしてほしいのだろうか?」みたいなことを言っていた。この番組は、↑の二人を嘲笑しているように感じたみたい。そして、「ネットで噴きあがって愛国を叫ぶ弱者を批判しているが、そういう彼らにどうしてほしいの?」みたいなことを。「左の思想に共感してほしいのか。または、社会のゴミは消えてしまえと思っているのか?前者なら、その方法は完全におかしい。君たちは、馬鹿だから馬鹿な考えに感化されちまうんだ。オレたちのように頭を使って、まともな考えを持て、と言ってるように見える。社会的弱者のネット右翼である自分にはそう見える。そんな声を聞いて、左側の考えに共感しようなんて思うネット右翼はいないんじゃないか?」


このようなことを思ったようだ。↑は正確な引用ではない。思いっきりパラフレーズさせてもらいました。しかし、内容はこんな感じだった。この番組が「ネット右翼」を嘲笑しているとまでは思わなかったが、僕はこの人と同じように感じた。(というか、僕も自分のこと社会的弱者だと思うし。)この特集に、日本の未来を担うであろう若者二人に対する愛情はあまりかんじなかった。自分たちと違う人たちがいて、彼らがどういう人間か確認して、俺たちと違うと「他者化」して、それで満足しているようにしか見えなかった。自分たちの問題として考えようとしていない。(そりゃ、他人ですけどね。へタレ・ナショナリストとしては、「日本国の問題!!(笑)」として考えようよと。というか、同じ人間の問題として、もう少し突っ込んで考えようよ。まあ、時間足りないですけどね。)

おまけですが、この「自称ネット右翼」の人は好感が持てる。この人には、巷にあふれるお約束の他者(中韓・サヨ)への「憎しみ」があふれていない。それでいて素直。こういう人の声を大切にしたい。


で、この番組についてですが、そういう分析はことあるごとにするべきだし、広く知らしめる必要はある。けどねえ、それだけで終わったってしょうがないんだよねえ。そういう人は「弱い人」ってカテゴライズして終わったら、やっぱり意味がない。↑の方の言うとおりですよ。そういうのは「弱い人」だから、俺のように「強い人」になりましょう、って偉そうに言ったって誰も聞かないって。そう言ってるように思われちゃったら、全然ダメだって。

本来、左派ってのはそういう人たちの味方のはずでしょう。そういう人たちの問題に真摯に向き合い、共に考え、どうしていくかを探るべきでしょう。「あいつらは弱い奴」ですましてどーすんの?と。ベタベタ近寄ったり、媚びたらキモイけど、そーゆー傲慢な(または、そー見える)態度が左派が嫌われる一番の原因でしょう。「つくる会」の「普通の人」による「庶民の常識」に根差した運動が支持されちゃったりする理由でしょう。












嫌がらせとかをやっているのは一部で、大部分の「愛国者」「愛国者予備軍」たちは、それなりに真面目な気持ちでそういうこと考えるようになったのだと思う。少なくとも、自発的に「つくる会」の会合に出るような人は。小熊英二も、「彼らは平均よりも「真面目さ」と「熱情」をもつ人びとなのかもしれない」(あとがきPart2)と言っている。


靖国問題について」でも書いたけど、右は、そういう人びとの不安をさらに煽って動員してる。他者への憎悪を煽って動員してる。おまけに、「おまえは良識があり、誇り高き愛国者だ」と誉め自尊心をくすぐりながら。そういう人たちの俗情に媚びるのが右。(追記:この「右」は巷の売れてるバッシング・マーケットの寵児たちのことね。右思想すべてについてじゃないですよ。)

左はそうじゃない。左は違うやり方で、そういう人たちのために発言しなきゃならないはず。そういう人たちが、いかにして自尊心を得れるかを考えなければならない。国家に自尊心を投影なんてせず、他者を憎悪し己の精神の安定をはかるのでなく、自己の試行錯誤で自尊心を得よ!それがおまえ自身のためになる、と言うのは簡単だが、いかにそれを伝えるかを考えなければならない。

左は、そういう人たちとともに歩まなければならないはず。右とは違うやり方で、そういう人たちとコミュニケーションしなければならない。僕は面倒なんでやりませんけど、本来は、オピニオン・リーダー(なんだよそれ?笑)たちの責任でしょう(他人まかせはよくないかな?)。↑の「自称ネット右翼」の人なんて聞く耳持ってると思いますよ。こういう人の声に耳を傾けてもいいんじゃないかと。こういう人たちに訴えることを想定して、言説を構築しろ、ということです。

はっきり言って、左派論壇の言葉じゃ絶対に説得できないですよ。既存の言葉は完全に輝きを失った。全然響かない。僕にすらまったく、マジでまったく響かない。新しい言葉を生み出さなきゃダメ。他者に響く言葉を。言論・思想とはそういうもん。小熊英二が「民主と愛国」で表現したとおり。そうやって、また言論・思想を発展させていかなければならない。












話変わって素朴な疑問なんだけど、いまいち中国・韓国を憎悪する理由がわからないんだよねえ。いや、もちろん、よくわかるんだけど、一部の日本人が何に憤ってるかはよーく知ってる。マジで熟知しまくり。自分が何言ってんだかわかんないけど(笑)。

ただね、普通に考えると、中華人民共和国と韓国の「公権力」によって(メンドーなんで、とりあえず、中国人・韓国人はおいておいて、国家に限定)、日本人がなんか酷い目に会わされたとかほとんどないよね?別に、大空襲されまくって、家族・同胞を何十万人も殺されたわけでもなし、核爆弾落とされて大虐殺されたわけでもなし、何十年も植民地支配されたわけでもなし、侵略されて家族・同胞を殺されまくったわけでもなし、日本の空を優先的に使われてるわけでもなし、日本に軍事基地があって住民が迷惑かけられてるわけでもなし、その軍隊に日本でいろいろ問題起こされてるわけじゃなし、・・・・・・・・。

多少ムカツクのはわかるけど、憎悪するほどのことなくない?と素朴に思ったりすんだけど。↑のような経験してれば、そりゃ、憎悪の理由はよく理解できる。もちろん、たとえ、↑のような経験してても、「まあ気持ちはわかるけど、憎悪したってしょうがないよ。未来のためにならないよ」と言ってやりたいけど。

まあ、憎悪やら嫌悪みたいな感情ってのは理屈じゃないからなあ。生理的なもんだしね。↑で言ったように、僕自身そういう感情持った経験もありますし。気持ちはよくわかる。

そーいえば、脱北者を支援していた日本人が三人ほど、中国の公権力に酷い目に会わされましたね。あれは怒るべき。

いや、僕自身は、もちろん、中国の公権力にはいろいろ言いたいことあんだけどね。対日本人というより、対中国人その他についてなんだけどね。というか、中国共産党政権がロクデモネーのは当然の前提。
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by mudaidesu | 2005-10-30 01:57 | ナショナリズム


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