日本人の劣等感と優越感? & 欧米リベラル


「嫌韓流」が巷で話題になってますが、僕自身は本屋さんでザーと目を通しただけです。というか、恥ずかしくて落ちついてチェックできなかった根性ナシの僕。余裕だと思ってたんだけど、いざ、立ち読みはじめると急に恥ずかしくなってきた。レイシストはこの世で一番なりたくないものだから。他人からどう思われようとたいして気にしない僕なんですが、まだまだへタレですね。誰も気にしちゃいないだろうけど、自意識過剰になっちゃう。

で、なぜ、いまさらこの話かというと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンのサイトを見てたらこんなニュースがありました。

Japanese fad: Comics that degrade Chinese and Koreans (記事全文だよ)
http://www.iht.com/articles/2005/11/20/news/comics.php

ちなみに、ニューヨーク・タイムズでの記事タイトルは「Ugly Images of Asian Rivals Become Best Sellers in Japan」。


で、日本語の記事を検索してみました。↑の記事の内容は↓こんなかんじかと。

「日本の『嫌韓流』は警戒心理・劣等意識の発露」NYT紙  中央日報
嫌韓流や反中漫画紹介・NYタイムズが1面で  日本経済新聞


一面ですか・・・。ちなみに、僕はこの漫画について全然詳しくない。この漫画についての論争にもほとんど興味ない。「論座」で東浩紀が「嫌韓にはリアリズムが欠如してる」とかスカした批評書いてたのを読んだくらい。で、ざっと目を通した印象では、典型的なレイシストのプロパガンダ本だなと思いつつも、それは過大評価かもと思った。というか、ネット上にあるものをプロパガンダ(=イデオロギー的確信犯)ではなく、「金儲け」に使っただけかと。レイシズムが商売になるってことに目をつけただけかと。

ただ、日本でレイシズム描写がメインカルチャーになった記念すべきムーブメントとは言えると思う。ちなみに、「レイシズム」という表現は「他人種・他民族・他国籍等の人びと蔑視」という意味で使ってます。

「まともな日本人」をかっこよく、美しく描き(言い過ぎか?笑)、「愚かな韓国人」を醜く描く。ニューヨーク・タイムズによると、日本人のキャラは大きな目・茶髪の白人っぽいルックス。韓国人は黒髪・細い目のいかにもアジア人のルックス。この記事は、こういう描写は欧米への劣等感・アジアへの優越感からきてるのではと分析。











内容も、「まともな日本人」が「愚かな韓国人」を「論破」し「冷笑」する内容。結論は、「まともな
日本人」が「韓国人ってアホだなあ。やれやれ」と。韓国人を侮蔑・嘲笑することが目的の書。

こういうレイシズム描写のものが堂々と本屋さんに並ぶ光景はなかりシュール。日本人・韓国人を他の民族やら人種に置き換えてみれば、そのレイシズムぶりは誰にでも理解できる。歴史認識がどうとかそういう次元じゃない。描写のトーンが完全にレイシズム。相手を、特定の人種なり民族なりを悪魔化する典型的なレイシズムの手法。

で、このニューヨーク・タイムズのは、ある国で排外主義・レイシズムが盛り上がってまーすって記事で、ドイツのネオナチやらフランスの極右やらを紹介してるのと変わらないノリ。こういう記事にお約束の「xenophobia(直訳は外国人嫌い)」という表現を使ってるし。この記事を読んだ外国の方々からはそう見えるのは確実。ま、実際、そのとおりだと思うし。

ところで、このニューヨーク・タイムズの記者、オオニシさんの評判が一部ですこぶる悪い(笑)。イラク人質事件の際、日本の人質バッシングの野蛮さを批判する記事を書いた人。この前の選挙後も、小泉さんの手法を批判、日本の市民社会の低レベルぶりを書いた。で、後者の記事(と誰が書いたかわからんけどニューヨーク・タイムズの社説)については、産経新聞のあの古森義久さんがご立腹でした(笑)。ちなみに、一部の人たちの間では、ニューヨーク・タイムスは朝日新聞社に間借りしてるので、朝日=ニューヨーク・タイムズ=反日。終わり。ってことらしい。便利な論法だなあ、と感心してます。マジで。


で、僕ですが、何度か書いてきたように、欧米の支配的なリベラル言説にはやっぱり違和感がある。やはりアジア人として欧米で教育をちょっと受けた経験から。僕自身は、一応リベラル系だし、欧米のリベラル言説からはいろいろ学んだし、ものすごい敬意を持ってる。けど、もの足りないものを感じ、ポストモダンやアンチ近代主義的な言説にひかれまくりでもある。アンチ近代の先生もたくさんいたし。

だから、ニューヨーク・タイムズの↑のような日本に関する論評は半分同意どまり。無邪気に全肯定はできない。欧米リベラリズム=市民社会論の理想がまずあって、それへの到達レベルによって非欧米社会を評価してるように感じる。ちょっとしたオリエンタリズムに陥っちゃってるところもある。(「嫌韓流」はオリエンタリズムどころの騒ぎじゃなくてレイシズムの領域にいっちゃってるけど。)別に、それはそれでいいんだけど、日本人がそれをそのままありがたがるのはどうかと思う。このへん難しいところなんだよねえ。「『ネットで広がる愛国心』 by 筑紫哲也のNEWS23」とそこのコメント欄でもちょっと書いたんだけど。ただ、「週刊金曜日」(!)に↑のニューヨーク・タイムズの人質バッシング批判記事を批判する文章があったような気がする。中身はすっかり忘れたけど。

ようするに、ニューヨーク・タイムズの記者の書き方みたいのは、なんか他人事っぽいのよ。安全圏(文明的で進歩的な市民社会)から野蛮なサルどもを論評してるように見えるのよ。(中国・韓国に対してそれをやってる人が批判するのはダブスタだけど。)で、筑紫さんをはじめ日本のリベラル知識人にもそういうところがあるんじゃないかなあと。このへんほんと難しい。ある理念(リベラリズム)に基づいての批判はまったく正当なものだから。

個人的には、「朝日新聞」―「ル・モンド」―「ニューヨーク・タイムズ」―「インターナショナル・
ヘラルド・トリビューン」―「フォーリン・アフェアーズ」の仲良しリベラル・エスタブリッシュメン
ト枢軸のエリートくささがどうもねえ、と思ったり。協力するのはいいことだと思うんだけど。


ところで、↑のニューヨーク・タイムズの記事は「日本人の西洋への劣等感とアジアへの優越感」の話をしてるが、西尾幹二さんにそれを感じるんだよねえ。西尾さんってニーチェ研究者のようだけど、ドイツで嫌なことあったんじゃないの?とか勘ぐっちゃう僕がいる。たまにいるんだよね。外国で嫌な思いして、国粋主義者になって帰国する人が。つかね、外国にいるとその国の嫌なところがやたら目について、母国の良いところが急に見えてきたりするもん。実際は、どこの社会でも長所・短所があんだけど。国粋になっちゃうのは、日本人だけじゃなく、何人にもいる。西尾さんって、そういうタイプじゃないのかなーと勝手に思っちゃってるんだけど。違ったら、ごめんなさい。










西尾さんの「国民の歴史」にも、やたら西洋と日本を張り合わせる記述が多かったような気がする。日本の何々は西洋の何々に匹敵する!みたいなことを何度も書いてたような。別に、西洋といちいち比べないでもいいと思うんだけどねえ。朝鮮人は哀れな民族だ、とか同情じゃなくて侮蔑を込めて書いてたこともあるし。セコイんだよねえ。西尾さんの言う「誇り」って。他所と比べてどうたらこうたらみたいのや、他所を貶めてどうたらこうたらみたいのばっか。逆に情けなくなっちゃう。むなしくなっちゃう。

西洋への劣等感とアジアへの優越感で思い出すことはたくさんあります。そーいえば、「花王アジエンス  チャン・ツィイーCM」でもちょっとだけ触れた。テレビその他ではくさるほど例があるけど、一番記憶に残っているのはさんまの番組かなあ。出演者の素人の女性が「インド人と付き合ってた」と言ったら、スタジオ大爆笑。他の番組でも、ある人が「タイ人と付き合ってた」と言ったら爆笑されてた。別に、嫌韓とかとは違ってみんな悪気はないと思うんだけど、なかなか根は深いですなあと思いましたよ。

なんか書こうと思ったこと全然書けなかった。はやくも飽きちゃった。ニューヨーク・タイムズ的な論調への違和感を素朴に表現してみようと思ったんだけど。念頭にあるのは、アンチ近代の文化人類学者の中国(や日本)市民社会論。欧米の支配的なリベラルからすりゃ、中国の市民社会なんてウンコなんだけど(僕もウンコだと思うし)、ポストモダンとかの学者が違った視点からあざやかな仕事してたりする。またそのうち気が向いたら。



「ネットで広がる愛国心」 by 筑紫哲也のNEWS23



追記:引用ね。

「マンガ嫌韓流」から欧米に対する劣等感が見え隠れするということは同意するけれど、同時に欧米人がよく日本のマンガを見て「日本人が西洋人のような外見に描かれている」と言うのは言葉通り受け取れない。最近は優良なものも増えているとはいえ、欧米のコミックに登場するアジア人はまるで西洋人とは別の生物であるかのようにステレオティピカルにデフォルメして描かれている例が多く、かれらにとって「西洋人のような外見」とはそうしたデフォルメをしていない登場人物のことを言うわけだからね。

欧米のマンガでアジア人がデフォルメされるように「マンガ嫌韓流」においては韓国人の登場人物がデフォルメされて登場するけど、だからといって「このマンガは日本人を西洋人の外見に描いている」というのは間違い。正しくは、欧米のコミックにおいて西洋人が「スタンダード=普通の人間」として描かれているのと同様に、このマンガでは日本人が「スタンダード=普通の人間」として描かれているだけ。(はいはい、本当に劣等感をにじませているマンガもありますよ、でも「マンガ嫌韓流」の場合は当てはまらないと思うのね。)

批判するなら韓国人に対する民族差別的なデフォルメを批判すべきで、日本人がデフォルメされていないからといって「西洋人に似た外見に描いている」なんていうのは、かれら自身の人種偏見を告白しているに過ぎない。日本人の漫画家が劣等感を感じているから日本人を西洋人に似せて描いたのではなく、西洋人の読者が優越感を持っているからこそ、「スタンダード=普通の人間」として描かれている人間がかれらの目には西洋人にしか見えないのです。

*minx* [macska dot org in exile]
http://d.hatena.ne.jp/macska/20051127

ん~ん。すばらしい。




つづき→西尾幹二とネタとかベタとかロマンとか
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by mudaidesu | 2005-11-21 21:49 | ナショナリズム


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