田中宇の無茶!?


ちょっと長いけど、田中さんの文章の一部の引用。


▼無茶なタカ派戦略をわざとやる新中道派

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米政界には「ブッシュ政権がやっているネオコンの戦略は、アメリカの力を無駄遣いしているので、それをやめさせて、強いアメリカを復活させたい」と考えている「中道派」がいるのは事実である。しかしその一方で、中道派の中には「ネオコンの戦略をどんどん過激にやってアメリカの力を無駄遣いさせ、アメリカの覇権を故意に低下させることによって、世界を多極化したい」と考えている「新中道派」とでも呼ぶべき勢力がおり、こちらの方が、旧来の中道派よりも強い。

新中道派にとっては、ブッシュ政権を方向転換させる必要などない。タカ派的な強硬策をどんどん無茶にやっていれば、自然とアメリカは衰退し、中道派が目指していた多極化が実現され、弱くなったアメリカは国際協調主義の方針しかとれなくなる。ネオコンの政策を乗っ取って、中道派の政策を実現しようという戦略である。



私が見るところ、この乗っ取り策を最初にやったのは、パウエル前国務長官である。開戦前の記事「イラク戦争を乗っ取ったパウエル」にも書いたが、国務長官だったパウエルは、イラク侵攻の4カ月前の2002年12月中旬のホワイトハウスの会議以来、穏健派からタカ派に転じている。

パウエルはその後「EUとの協調など必要ない」「国連のイラク査察はやっても意味がないので、早くやめて侵攻した方がいい」などとネオコン風の発言を繰り返しつつ、2003年2月には国連で、誰が見ても証拠になりそうもない事柄を並べて「これが、イラクが大量破壊兵器を開発している証拠だ」と演説した。これはどうみても、わざとアメリカに対する信頼を損なう行為だった。(関連記事)

▼パウエルの「隠れ多極化戦略」を受け継いだライス

私は当時は、パウエルは戦争を回避するために、タカ派に転じたふりをしているのだろうと思っていた。だから、イラク侵攻が実際に起きた時、これはパウエルら中道派の敗北で、ネオコンの勝利であると考えた。ところが、その後のブッシュ政権の行動は、予想に反するものだった。口ではタカ派的なことを言いながら、実際にやっていることは中国やロシアなどに対して譲歩する「隠れ多極化戦略」が始まったのである。(関連記事)

(多極化戦略の意味については こちらを参照)

その一方で、米軍はイラクの占領を故意に泥沼化しているのではないかと思われるような事態も始まった。当然の帰結として、イラク占領は泥沼化した。(関連記事)

2004年初めには、パウエルは「フォーリン・アフェアーズ」に「ブッシュ政権はロシア、インド、中国といった、大国との関係を強化する」「アメリカは、強くて安定し、経済力と外交力を持った大国として中国が台頭することを望んでいる」と主張する論文を書いた。私が「パウエルはタカ派のふりをすることで、中道派的な多極化を実現する作戦を実行していたのだ」と感じたのは、この論文を読んだときだった。(関連記事)

今年初めにブッシュ政権の1期目が終わり、パウエルが辞任してライスが国務長官になった後は、ライスがパウエルの「隠れ多極主義」の戦略を引き継いだ。

たとえばライスは先日、中央アジアのタジキスタンを訪問し、ウズベキスタンから米軍基地が追い出されたことを受け、代わりにタジキスタンに米軍基地を置こうとしたが、断られた。ライスは、タジキスタンの大統領に対して「民主化せよ」と強く求めたため、嫌がられたのである。その結果、ウズベキスタンに続いてタジキスタンも、ロシア寄りの姿勢をはっきりと打ち出すようになった。(関連記事) ライスは、相手が怒ることを知りつつ「民主化」を会談のテーマとして持ち出し、うまくやれば親米になってくれる国々を、故意に反米の方向に追いやっている。そして、すべてが失敗した後になって譲歩を行い、世界を多極化する方向に動かしている。極端にタカ派的な姿勢をとることで、中道派的な結果を導き出している。

ライスは最近、イランやシリアを攻撃する言葉をさかんに発している。ライスは、ブッシュにも「ここで方向転換してはなりません」とアドバイスしているらしく、ブッシュもイランやシリアを非難する発言を繰り返している。(関連記事)

すでに述べたように、イランやシリアを反米の方向に追いやると、イラクから米軍がスムーズに撤退できなくなる。新中道派は、ブッシュを操り、ブッシュの願望とは正反対の、イラク占領の失敗すら画策しているように見える。

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しかし、こうした疑惑は、おそらく今後も表面化せず、歴史の闇にしまわれる可能性が高い。イラク戦争は「ネオコンが起こした失敗」として歴史に刻まれ「この失敗の結果、アメリカは衰退し、世界は自然に多極化した」というのが歴史の定説になるのかもしれない。中道派が戦争政策を乗っ取って世界の多極化のために使った、などとという話には、最後までならないだろう。

ホワイトハウス・スキャンダルの深層  2005年11月1日


これには、僕はまったく乗れないけど、田中さんの文章はいつもおもしろいから好き。この人の裏読みはほんとおもしろい。堂々とこういうことを言っちゃうところもいい。いつも、そりゃ無茶じゃねーか?と思うような仮説を堂々と立てるのはすごい個性。かなりの情報を集めてるし、いろいろな文献を読みまくってるからこその自信なのかな。僕なんかがこういうこと言ったら、ただの妄想になるんだろうけど、田中さんの場合は一応根拠はたくさん示せるしね。CIAなんかが分析する情報も、ほとんどは報道などのそこらへんにあるようなものらしいし。
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by mudaidesu | 2005-12-15 04:43 |


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