ナベツネ on NYT  ヤスクニとソフトパワー


ナベツネがニューヨーク・タイムズに登場。オオニシ記者(笑)によるインタビュー。

Publisher dismayed by Japanese nationalism IHT


ちょっとだけ引用。↓

I have very little time left.

(俺にはあんまり時間残ってねー。)

Mr. Koizumi worships at a shrine that glorifies militarism, said Mr. Watanabe, who equates Tojo with Hitler. He added, "This person Koizumi doesn't know history or philosophy, doesn't study, doesn't have any culture. That's why he says stupid things, like, 'What's wrong about worshiping at Yasukuni?' Or, 'China and Korea are the only countries that criticize Yasukuni.' This stems from his ignorance." Like many of postwar Japan's leaders with wartime experience, Mr. Watanabe is suspicious of the emotional appeals to nationalism used increasingly by those who never saw war.

(東條英機とヒトラーを同等視する渡辺氏によると、小泉氏は軍国主義を賛美する神社に参拝している。渡辺氏曰く、「この小泉って人間は歴史も哲学も知らない。勉強もしない。教養もない。だから、彼はアホなことばっか言ってる。たとえば、『靖国参拝の何が悪いん?』とか『靖国を批判するのは中国と韓国だけだ』。こういう発言は無知からくる」。戦争経験を持つ多くの戦後日本のリーダーたちと同様に、渡辺氏は、戦争を知らない人々によって煽られる感情的なナショナリズムに疑念を持ってる。)




この部分も他の部分も、最近ナベツネさんが言ってることと同じ。(「ナベツネ at 朝日新聞」)

これについて、日本語の記事。↓

NYタイムズ、靖国参拝批判など渡辺読売主筆紹介記事 読売新聞
読売新聞会長「小泉首相、歴史も知らない」 中央日報



そして、こんなニュースも。

NYタイムズ紙「麻生外相、正直でなく賢明でもない」 中央日報
米各紙、麻生氏を非難 「外交センス、歴史観異常」 西日本新聞
麻生外相発言 「誠実さも賢明さもうかがえぬ」米紙批判  毎日新聞
「あ然とさせる発言」麻生外相を米紙が痛烈批判  読売新聞


そのニューヨーク・タイムズの社説はこれ↓。すごいタイトル。麻生さんをボロクソ。

Japan's offensive minister


ボストン・グローブの社説はこれ↓。日本と麻生さんをもっとボロクソ。

Japan's history lesson


(ちなみに、ボストン・グローブはニューヨーク・タイムズ傘下ね。インターナショナル・ヘラルド・トリビューンにもボストン・グローブの記事があったりする。これも、だからなんなん?だけど。)




ちょっと前の「報道2001」で、ジェラルド・カーチスが「靖国問題のせいで、海外で日本のイメージが下がってる」と言っていた。それに対して、一緒に番組に出てた安倍晋三さんが、いかにニューヨーク・タイムズの社説と記事が「偏向」してるか言っていた。

けど、ポイントはそこじゃない。ニューヨーク・タイムズが「偏向」してるかどうか、間違ってるか正しいかなんてほとんど関係ない。カーチスが何を問題にしてるか、まったくわかってないのだろうか。

ニューヨーク・タイムズ=朝日のお仲間=反日=終了。みたいな言説で満足してても、日本の国際的なイメージが良くなるわけじゃない。

これは、靖国問題における日本の国際的なイメージの話。世界で最も影響力のあるメディアである、ニューヨーク・タイムズが報じた記事が世界中で読まれるわけだから。そして、読む人が安倍さんと同じ思想や歴史観を持っているわけじゃない。ほとんどの人は、20世紀前半の日本=悪。中国・韓国=被害者、って前提なんだから。



今日の国際政治は、国内世論と国際世論をオーディエンスに「タテマエの正当性」を競うようなもの

森本敏さんが朝生でも言っていたのですが、日本が靖国問題で「国際的に正当性のある」反論をするのは不可能でしょう。というか、中国共産党の言い分の中で、靖国参拝批判ほど、「国際的にまとも」な主張はあんまりないでしょう(笑)。

靖国問題について


と書いたけど。


カーチスのような、日本大好きの人は、靖国問題で日本のイメージが悪くなることが悲しいわけ。大好きな日本のイメージが損なわれるのが嫌なわけ。日本のためを思って言ってるわけ。日本を心配してる。

まさに、ジョセフ・ナイのいう「ソフトパワー」の話。靖国問題によって、日本のソフトパワーが著しく損なわれてるって話。

カーチスはコロンビア(NY市)の先生だけど、やっぱ、周りの人たちの「靖国・・・なんだありゃ!?」的な雰囲気をひしひしと感じてるんだろう。だいぶ、ニューヨーク・タイムズの報道が効いてるなと率直に感じてるんだろう。




繰り返すけど、ニューヨーク・タイムズやオオニシ記者が、朝日のお仲間だとか反日だとか言って満足しててもしょうがない。好き嫌いは別にして、世界で最も有名で影響力のあるメディアの一つ。

「嫌韓流」がニューヨーク・タイムズの一面トップにくれば、たくさんの人がそれに興味を持つ。日本に悪いイメージを持つ人もいれば、日本が好きな人たちは、日本のナショナリズムやレイシズムやヘイトスピーチを残念に思い、日本の将来を真剣に心配する。

東浩紀がアメリカ行ったときに、↑の記事のせいで「嫌韓」についていろいろ聞かれたそう。
その話はこちら→95年以後の日本社会論を発信せよ by 東浩紀 



そして、アメリカの日本大使館がインターナショナル・ヘラルド・トリビューン(ニューヨーク・タイムズその他の国際紙)にお手紙を寄稿して弁解する。


日本のナショナリズムの盛り上がりが、いろんなところで話題になっていますが、そんなことはありません。たしかに、「嫌韓流」はたくさん売れましたが、世論調査 によれば、日本人の韓国人に対するイメージはここ10年で非常に良くなりました。日韓共催ワールドカップのおかげでもあります。「新しい歴史教科書」もほとんど採択されてません。心配はいりません。(超俺訳)

The myth of rising Japanese nationalism



こういう文章がオピニオン(社説・コラム)セクションにあった。日本大使館公使の文章。おそらく、いろんなところでニューヨーク・タイムズの「嫌韓流」の記事について聞かれたんだと思う。日本は大丈夫なんですか?心配です。みたいなことを日本好きな人たちから言われたんだろう。

米紙「麻生たたき」社説 NYタイムズとボストン・グローブ」 によると、「ワシントンの日本大使館によると、ニューヨーク・タイムズの社説に対して、日本政府はニューヨークの総領事館を通じた反論を準備している」そう。外交官もたいへんだな(笑)。これって尻拭いだよね。でも、イラク人質事件のときもそうだけど、ニューヨーク・タイムズには何度も外務省は弁解を寄稿してるな。やっぱり、ものすごい影響力なんだろう(特にエスタブリッシュメントの間で)。



靖国問題の国際的なイメージってどんなもんなのか。英語ニュースを「yasukuni」でテキトーにちょっと検索するだけでそれなりにわかる。靖国神社は「war shrine(戦争神社)」と紹介されることが多い。


The Yasukuni shrine, which honours 2.5m war dead, has been avoided by Japanese emperors ever since 14 top World War II criminals were enshrined there in 1978.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4664534.stm

このBBCの記事は、14人のもっとも重要な戦争犯罪者が祀られて以来、 天皇は参拝していない、と。


Tokyo's Yasukuni shrine, seen by critics as a symbol of Japan's past militarism because convicted war criminals are honoured there along with Japan's war dead.
http://today.reuters.co.uk/news/newsArticle.aspx?type=worldNews&storyID=2006-01-25T080833Z_01_T235521_RTRUKOC_0_UK-JAPAN-SHRINE-CHINA.xml&archived=False(リンク先もうないや。)

このロイターの記事は、批判者からは、靖国は戦争犯罪者たちを称賛しているので、 日本の過去の軍国主義の象徴と見られている、と。


The shrine honors 2.5 million Japanese war dead, including several executed World War II war criminals. It also houses a museum that seeks to justify Japan's military invasions of its neighbors in the first half of the 20th century, including that of China.
http://newsfromrussia.com/world/2006/01/26/71810.html

このプラウダの記事は、靖国は処刑された 戦争犯罪者を称賛し、神社経営の博物館は20世紀前半の日本の近隣諸国への侵略を正当化しようとしている、と。


In a more recent magazine piece, Watanabe, 79, recalled his own experiences during the war, expressed his contempt for the country's wartime leaders?and condemned Yasukuni as a bulwark of revisionism: "The Yasukuni Shrine runs a museum where they show items in order to encourage and worship militarism. It's wrong for the prime minister to visit such a place"?
http://msnbc.msn.com/id/11080282/site/newsweek/

このニューズウィークの記事は、ナベツネの靖国批判まで載せてる。「論座」の対談について。


Some of Japan's neighbors, especially China and the two Koreas, regard the shrine as a symbol of Japan's 20th Century militarism because convicted war criminals are among those honored there and, they say, the shrine's museum glorifies Japan's colonialism
http://www.voanews.com/english/2006-01-29-voa12.cfm

ボイス・オブ・アメリカは、中韓朝は、戦争犯罪者が称賛されているので靖国を日本の軍国主義の象徴と見なし、博物館は日本の植民地主義を賛美していると言っている、と。


As victims of Japanese atrocities before and during World War II, China and South Korea have protested at Koizumi's repeated visits to the shrine, widely considered as the symbol of Tokyo's past militarism, and refused summit talks after Koizumi made his fifth visit as premier last October.
http://www.tmcnet.com/usubmit/2006/02/07/1348807.htm

TMCnetってのは、日本の残虐行為の被害者として、中韓は、日本の過去の軍国主義の象徴と広く見なされている神社への小泉首相のたび重なる参拝に抗議している。そして、小泉は抗議を拒絶し、五回目の参拝をした。 と。



ほとんどの記事に、神社は戦争犯罪者を称賛してるとか、侵略を正当化してると批判されているとか、 軍国主義を賛美していると言われてるとか、天皇は参拝を避けているとか、中国や韓国が怒っているとか、 そういう記述がある。

そして、国際的なイメージとしては、日本が加害者で、中国や韓国は被害者。その被害者が怒っている。大前提として、20世紀前半の日本は悪。それが多くの読者の出発点。

こういう記述を読んだ人は、靖国問題にどのような印象を持つだろうか。



「googlenews US」で検索したら、「the Asahi shinbun」の記事がたくさん出てきた。中国韓国のメディアの記事もたくさん出てきた。英語圏の人が「yasukuni」で検索すれば、触れる記事はこういうの。

↑で紹介した記事はほんの最近のもの。ちょっと検索して最初の方に出てくるもの。小泉さんが靖国行ったときの記事なら、もっともっと詳しい話が書かれていただろう。靖国神社や遊就館について。




そして、以前の記事にはこんなすごいのもあった。↓

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/from_our_own_correspondent/4449005.stm

BBC記者の靖国ルポ。「つくる会」の教科書にまで触れている。「右翼(right-wing)学者たちによる教科書」だと。「right-wing」って表現は非常にイメージが悪い。

この記事の南京事件(Rape of Nanjing)についての記述は、


The internationally accepted view is that hundreds of thousands died in an orgy of sexual violence and killing by Japanese troops

(国際的に常識的な見解は、何十万人もが性的暴力の乱交(orgy)中に死んだり、日本軍に殺された。)


orgyってのはスラングに近い。乱交。慰安婦は当然「性奴隷(sex slave)」と記述。欧米のメディアでは日本軍の慰安婦は普通に「sex slave」と表現されてるけど。靖国についてのこの記述がまたすごい。


The Yasukuni Shrine remains a potent symbol of how the Japanese, intoxicated by fascism and coerced by military rule, once collectively lost their reason and were fed fantastic myths, of racial superiority and the Emperor's divinity.

(靖国はいまだに、日本人たちがどのようにファシズムに毒され、軍政に強制され、集団的に理性を失い、人種的優越感や天皇の神性の狂信的な神話に煽られていったかをよく示す象徴である。)


その後に、遊就館についてのレポートが続くが、もうボロクソ。ボロクソ書かれてる。
この記者はあきれ果ててる。

靖国問題で、日本のイメージがどうなっちゃってるかよくわかる内容の記事。



The struggle to be 'normal'

↑このインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事も、遊就館について詳しく書いてる。そしてとても「offensive」だと。キリがないし面倒だからもうやめるけど、こういう記事がゴロゴロあるわけ。


http://videonews.com/keyperson/keypersonrecent2.html

↑で王毅駐日中国大使の外国人特派員協会での会見が見れる。とっても王毅に好意的な雰囲気。これは靖国問題のせい。外国メディアの記者たちが、靖国問題においては、王毅に共感してるから。靖国問題さえなければ、中国の人権問題やら環境問題やらなんやらについて厳しい質問が飛んだりの緊張した雰囲気になっててもおかしくない。


こういう人の感情に関わるようなネタについての中国政府の公式見解が、こんなに国際的に共感されるなんて、他の問題ではほとんどありえないだろう。


ニューヨーク・タイムズなんて、日本のメディアなんて屁でもないくらい中国の人権問題とかについて報じてきた。そして、靖国問題以前なら、日本についての記事なんて、ポップカルチャーとか文化的なネタばかりだった。コギャル語についてとか。政治的な記事なんてほとんどなかった。

「ちょっとストレンジだけど、ピースでラブリーなニッポン」ってかんじの記事ばっかだった。若い人たちには、「とってもクールでエキサイティングでファシネイティングでピースラビングなニッポン」ってイメージだった。

すっかり、おどろおどろしい記事ばっかになっちまったなあ。




「こういうメディアが「反日偏向」なせいで、日本のイメージが悪くなってる。日本のイメージが悪くなろうと(=ソフトパワーが減少しても)、国益を損なっても、正しいことを続けるべき」って主張ならいい。最低限、現実を直視してる。もちろん、僕は同意しないけど。けど、僕は国益最優先のリアリストじゃないんで、国益を損なってでもやらなきゃいけないことがあるって気持ちはよく理解できる。

しかし、靖国問題での日本のイメージ低下を直視せず、ただメディアが「反日偏向」だと言って満足しちゃってたらしょうがないと思う。内輪での癒しにしかならん。


似たようなことを「イラク人質問題」でも感じた。「直視すべき現実」ってのは、外からは日本の人質や家族へのバッシングが異様に見えるってこと。韓国メディアにも不思議がられてた。


欧米メディアが日本の人質バッシングを批判したとき、「欧米メディアは事情をよく知らない」「家族の態度を知れば理解できる」みたいなことを言う人があちこちにいたので。あと、欧米メディアの日本特派員が日本について詳しいのは当然。当時、日本で何が起こっていたかはよく知っていた。むしろ、驚きと好奇心で、必死になってこの問題について調べ、そして考えただろう。

イラク人質問題 1  家族


と書いたけど、直視しない人がほんとに多かった。

僕が思うに、バッシング派は正しいことをしてるという自負があるのなら、現実を直視した上で、「日本では、ああいう奴は叩かれるんだよ!」とか、「それが日本の文化だ!!文句あっか!このやろう!」と堂々と言えばいい。セコイことばっか言ってないで、自国の文化や慣習に誇りと自信を持てと。(または、「外国人や他の日本人がどう思うかは関係ない!俺は自分の信念に基いて連中を叩く!」とか。自分を主語にして主張するのを避ける人が多いんだよね。大勢の背後に隠れようとする人が多い。)

といっても、

一応、僕は「日本人の美徳」をまだ信じてるから。やさしさとか寛容さとか。思いやりとか。我慢とか忍耐とか正々堂々とか。ほとんどの日本人はそういう美徳を体現してると信じてるから。

イラク人質問題 15  今井さんのブログ


と書いたとおり、あんなのを日本の文化だとか「日本人性」だとは絶対に思わないけど。




長くてすんません。この問題は、ちょっと探すだけで、いくらでもネタが出てきちゃう。



追記:似たようなことを書いてるブログのエントリー。↓

メディア・リテラシー?
NYTの記事に関しての感想
「また中国か」メソッド

引用→「一部の日本人がどれほど中国の主張を鼻で笑ってみせようが、日中戦争の戦争責任問題に関する限りむしろ「また日本か」「日本ですから(;´Д`)」が国際社会のデフォルトだと心得ておくべきだろう。どう言い繕ったところで、日中戦争は中国大陸で戦われたのだという事実が意味するところはあまりに明白だからだ。」


ついでにこちらもちょっと関連。↓
http://d.hatena.ne.jp/travieso/20060218



ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 1
ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 2
ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 3

エグイ文章を見つけた。
靖国とかアメリカとか
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by mudaidesu | 2006-02-15 04:59 | ニッポン


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