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松井とイチローと愛国心
 

スポーツ好き、野球好きとしては「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」はそれなりに楽しみ。一応、元日本野球人(笑)としては、当然ながら日本を応援する。というか、「なにが日本代表だよ、ケッ」とか思いながら見ても、内心は、「日本がんばれ~」とハラハラドキドキしてしまうのは確実。

やっぱ、日本野球にはある種の「帰属意識」がある。もちろん、ヘタレ・ナショナリストでもある。

といっても、日本弱いと思う・・・。期待しちゃダメ。アメリカ・ドミニカ・べネズエラ・プエルトリコあたりには全然ダメだろうし。ただまあ、一回勝負だから、何が起こるかわからないんで楽しみ。




んで、松井が出場拒否した。残念だけれども、今のご時世、最近の風潮、ファナティックなナショナリズム、いろいろ考えると、ちょっとだけホッとした。松井がなかなか結論を出さなかったとき、出てくれ~と思いながらも、出るな~と両方思ってた。クリス・ロックと同じような気持ちもあるし



2月、3月はヤンキースのチームメートと多くの時間を共有することが大事なんです。それが、シーズン、ポストシーズンへの基礎になる。

WBC辞退「初心に帰って決断」 松井秀喜インタビュー



どうしても、大会そのものに賛同することができなかった。シーズンへの影響が避けられない3月という開催時期や、投手に球数制限が設けられる方向にあるなどプレーに制限があるため、真剣勝負とは言えない大会趣旨に納得できなかった。ヤ軍ファンのため、シーズン162試合を大事にしたい気持ちもあった。(松井の言葉じゃなくて、記者の言葉。)

松井WBC不参加決定!!王監督に伝えた(リンク先もうないや)



同大会への選手派遣に強い難色を示すヤンキースの意向、さらにシーズン開幕を目前に控えた3月という開催時期を含めた大会趣旨に賛同できないことから、・・・・WBCに参加予定だったAロッド、ポサダらヤ軍の主力が相次いで辞退を表明。また、米政府がキューバの参加を政治的理由から拒否するなど、松井の同大会への疑念は深まる一方となった。・・・

今オフに4年総額62億円の大型契約を結び、名実ともにヤ軍の中心選手となったことで、公式戦開幕に万全の状態で臨みたいとの思いも強かった。6月12日のカージナルス戦で捻挫した右足首は、半年たった今も「腫れは残っている」という状態。そのままWBCに出場することで調整が例年より1カ月前倒しになることは非常に厳しかった。(記者の言葉。)

松井秀WBC辞退決断 王監督に伝える



出場辞退は意外だった。松井は「日本のため」とか言いそうだから。

どっちなんだろう。自分のためか、それともチームへの忠誠心か。WBCが自分のシーズンの成績に悪い影響を与えたら嫌だからなのか。それとも、多少、自分の成績に悪い影響があったとしてもWBCに出てみたいと思っているのだが、もしそんなことになったらチームに迷惑かけると本気で思っているからなのか。

インタビューでは後者だと言ってるようなかんじだけど、それはある意味、あえて優等生的発言をしてるのかもしれないし・・・。本音はわからない。




イチローも意外だった。↓


5年間アメリカにいて、日本はすごい国だなと思う。こっち(日本)にいるときに感じなかったものが見えてきた。愛国心みたいなものが強く芽生えてきてます

イチロー、WBC目標は「世界一」日本離れて「愛国心芽生えた」 サンケイスポーツ



愛国心とか言っちゃってるし。・・・まあ、イチローにも余裕が出てきたのかな。気分転換として楽しめるようになったのかな。


僕の経験からすると、なんだか、海外滞在一年目の人みたいなこと言っちゃってるように思えるけど。「日本人の劣等感と優越感? & 欧米リベラル」で書いたけど、たしかに、最初の一年って滞在先の嫌なところばかりが目について、母国の良いところばかりを思い出す。ホームシックではないんだけど、似たようなところはあると思う。

この時点で、母国へ帰りバリバリのナショナリストになる人が何人にもいる。特に自分を「コスモポリタン」だと認識していた人にこういうのが多い。ある種の反動なんだろう。

二年目くらいになると逆になる。滞在先の良いところが急に見えてくるようになり、母国の嫌なところを思い出す。そして、そういう時期を過ぎると、どこの社会にも自分にとっての長所と短所があるんだなあ、と当たり前のように思うようになる。



でも、結局、僕も「日本がいいや」と思ったわけで、イチローの気持ちはよくわかる。ただ、僕のは「愛国心」みたいな話じゃなくて、「腐れ縁」とか「慣れ」とかがポイントかなあ。それもナショナリズムの一種だとは思うけど。あとは実利的というかなんというか、やっぱ喰いもんとかポップカルチャーとかそういうのがなにげにデカイかな。


遠藤周作の小説に「留学」てのがある。戦後すぐにフランスへ留学した日本人たちの話。彼らが次々と結核にかかる。主人公が「木の文化で育った日本人には石の文化の西洋はつらい」みたいなことを言う。「それわかるなあ」とつくづく思った。

別に木の家にも育ってないし、高度経済成長期もとっくにすぎて、今の日本と変わらない風景の中で育ったけど。おまけにアメリカなんて別に石の文化じゃないし。それでも、そういう感覚がわかると感じた。なんか違うんだよね。空気というか雰囲気というかそういうのが。

まあ、日本のごちゃごちゃしてるところが好き。カオスってかんじが。


だけど、よく考えたら、イチローってメジャー行った直後は、日本や日本人のことボロクソ言ってたような気がするなあ。時間が経つにつれてバランスよくなっただけかな。


ま、とにかく、イチローにも余裕が出てきたのかな。気分転換として野球を楽しめるようになった。今までは、一番大切なシーズンのことだけでアップアップ(良い意味で)してたんだろうけど。



ついでに、ラソーダさんがこんなこと言ってたみたい。↓


★ダブル辞退「失望した」…親善大使・ラソーダ氏が苦言

WBCの親善大使を務めるトミー・ラソーダ氏(元ドジャース監督)が日本外国特派員協会で講演。日本代表入りを辞退した松井秀(ヤンキース)井口(ホワイトソックス)には「失望した。なぜ国のために戦おうとしないのか」と苦言を呈した。大会PRのために奔走しているラソーダ氏は「WBCへの関心の高まりを感じる。素晴らしい大会になるだろう」と語ったが、代表辞退の動きについては「勝てば国中が幸せになるのに」と残念がった。

王監督がイチローをベタ褒め!WBC出場意思に「筋が通っている」 サンケイスポーツ


たぶん「disappointed」って言ったんだろうけど、「失望した」って訳すとなんかこの世の終わりみたいに強い意味になるけど、実際は「残念だなあ」くらいなかんじだと思う。

ラソーダさんみたいに素朴なのもいいんだけど(主催側の一人だし)、無邪気すぎるかなあと(記者がかな?)。やっぱ、なんでもかんでもナショナリズムの回路に回収しちゃうことには抵抗あるんだよね。素朴なのはいいんだけど、やっぱほんの少しの疑問や警戒心っては大事だと思う。ナショナリズムの負の部分に自覚的であるってことは、21世紀に生きるすべての人に要請されてると思う。




どうでもいいけど、イチローの演技がやたらうまかったのにはビビッた。動きとかはダメダメだったけど、しゃべりや表情なんかは、そこらの若手俳優なんかよりはるかにマシ。

イチロー 役者としても超一流  デイリースポーツ



笑えるネタも。↓

『ヤンキースの松井に顔がそっくりであることを理由に、今オフから背番号を松井と同じ55番に変えた選手が韓国球界にいる。松井にあやかって飛躍を狙うつもりだというが…。』

形が韓ジン“韓国の松井秀喜”成績はパッとしないが
by mudaidesu | 2006-02-28 01:53 | ナショナリズム


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