靖国とかアメリカとか


エグイ文章を見つけた。」のつづき。そこで紹介した文章で、


ワシントンでの中国に詳しい日本ウオッチャーは大多数がいまの日中間の緊迫を「中国の対決的姿勢」や「日中両国の戦略利害の衝突」 「中国の反日の国是」に帰する。


とか古森さんは書いてるけど、この人、前から「靖国問題で、アメリカの有力者は、日本ではなく中国に批判的」と一人で頑張ってる。





靖国問題、ワシントンは中国の態度に批判的

揺れる靖国問題、改めて米国側の本音を聞く


ちなみにこの媒体は、古森さんのあの黒人蔑視文章が載ったのと同じもの




気合いの入った「反中派」もアメリカにはそれなりにいるのはたしか。そういう人たちは、靖国問題でも中国を批判的に見るのもわかる。でも、それはあくまで「反中」だからかと。

靖国問題で、「靖国参拝やめたほうがいいよ」とか、日本を批判的に見てたり発言してる人たちは別に「反日」だからではない。ふつーに「親日」でしょうそういう人たちは。「親日」だからこそ、日本のことを心配して、靖国問題について発言したりしてるわけで。あとは、リアリストだったら、アメリカの国益を心配してたり。日本がアジアべったりも嫌だけど、アジアでゴタゴタされても迷惑だろうし。(ナベツネ on NYT  ヤスクニとソフトパワー


というか、古森さんが伝えるアメリカの声って、古森さんしか言ってないような。それと、古森さんの受け売りで発言する政治家や知識人くらい。古森さんには悪いけど、古森さん、だいぶムリしてると思う。


というか、靖国問題についてのアメリカ人の反応については、古森さんの言ってることって、森本敏さんにしろ、村田晃嗣さんにしろ、岡本行夫さんにしろ、他の親米保守知識人たちの言ってることと全然違うでしょう。みんな、「アメリカでヤスク二、ヤバイヤバイ」ってかんじかと。


最近人気者になってるテッシーこと手嶋龍一さんもそう。手嶋さんなんて、小泉さんが「ブッシュ大統領に靖国行くなと言われても行く。ブッシュ大統領はそんな大人気ないこと言いませんけどね」と言ったことについて、「それは事実と違う。ブッシュ大統領は去年すでに懸念を表明してる」と言ってた。懸念って日中関係についてだろうけど、それは直接言わないだけで、靖国どうよ?って意味なのは明白。

僕としては、古森さんより、この人たち(親米リアリスト)の方がずっと信用できる。





親米といえば、岡崎久彦さんで、この人は靖国参拝賛成だけど、こんな文章を書いたみたい。↓


【正論】元駐タイ大使・岡崎久彦 遊就館から未熟な反米史観を廃せ

「靖国」の尊厳すら損ないかねず 《唾棄すべき安っぽい議論》

 
8月20日の米紙ワシントン・ポストに保守派の論客として知られるジョージ・ウイル氏が論説を掲げ、安倍晋三氏は新総理となったら靖国に参拝すべからずと論じている。

その理由として挙げているのは、単に日中関係が悪いから修復する必要があるということだけであり、米国の世界戦略にとってどうのこうのという論点は全くない。むしろ、全体の書きぶりは、歴史家ウイル氏らしく、中立的、思索的であり、日本に対する非難のトーンはない。

たとえば、中国が内政干渉する以上、日本は言うことを聞けないとの態度に対しては、ネルソンの火掻棒理論を紹介している。

トラファルガーの海戦の前に、火掻棒を手にしてネルソンは言った。「火掻棒をどこに突っ込もうとおれはかまわない。ただナポレオンがここに突っ込めと言うなら、おれは他の所に突っ込む」。これを良いとも悪いとも言わず、中立的な歴史的な例として紹介しているだけである。

ただ、他のすべての個所はユーモアと余裕をもって書いているのに、一カ所だけ文勢が激しいのは、遊就館の展示についての次の部分である。

「遊就館の展示によれば、『大東亜戦争』は、ニューディール政策が大不況を駆除できなかったので、資源の乏しい日本を禁輸で戦争に追い込むという、ルーズベルト大統領の唯一の選択肢として起こされたものであり、その結果、アメリカ経済は完全に回復した、と言う。これは唾棄(だき)すべき安っぽい(あるいは、虚飾に満ちた、不誠実な=dis-gracefully meretricious)議論であり、アメリカ人の中で、アンチ・ルーズベルトの少数ながら声ばかりは大きい連中が同じようなことを言っていた」

ウイル氏は引用され得る少数論の存在もちゃんと示しながら、この論に対する侮蔑(ぶべつ)の態度を明らかにしている。そして更に「小泉氏も安倍氏も、靖国参拝の際、遊就館には行っていない」と公平に付記している。

全体の論旨には賛同できない点はある。というよりも、彼は私の尊敬する歴史家であるが、現実に動いている国際情勢については事実の誤認がある。

 《知のモラル上許せぬ展示》

2005年4月に中国で起きた反日デモは靖国とは何の関係もない。日本の安保理常任理事国入り反対は、官製デモの目的であり、靖国参拝の結果ではない。

昨年10月の小泉総理参拝の前に、私は、反日デモは警察の厳戒態勢内の少数の抗議運動以外は有り得ないとして、総理の参拝を支持したが、現にデモはなかった。8月15日の参拝後もそうだった。

昨年の総理参拝のころから、日本の対中国投資は再び活発になっている。問題は首脳会談がないという人為的な障害だけであり、むしろ、こんなものは無視した方がよいという歴史観に基づく判断もあってよいと思う。

この論文を読んでいて、ウイル氏が歴史家としてのインテレクチュアル・インテグリティー(知性のモラル)上、真に許せないと思っているのは遊就館の展示だと思う。

この展示には、日本では他の国より弱いかもしれないが、世界的にどこでもある反米主義の一部が反映されている。過去4年間使われた扶桑社の新しい教科書の初版は、日露戦争以来アメリカは一貫して東アジアにおける競争者・日本の破滅をたくらんでいたという思想が背後に流れている。そして文部省は、その検定に際して、中国、韓国に対する記述には、時として不必要なまでに神経質に書き直しを命じたが、反米の部分は不問に付した。

私は初版の執筆には全く関与しなかったが、たまたま機会があって、現在使用されている第2版から、反米的な叙述は全部削除した。

 《これでは靖国をかばえず》

戦時経済により、アメリカが不況の影響から最終的に脱却したことは客観的な事実であろうが、それを意図的にやったなどという史観に対しては、私はまさにウイル氏が使ったと同じような表現-歴史判断として未熟、一方的な、安っぽく、知性のモラルを欠いた、等々の表現-しか使いようがない。

私は遊就館が、問題の個所を撤去するよう求める。それ以外の展示は、それが戦意を鼓吹する戦争中のフィルムであっても、それは歴史の証言の一部であり、展示は正当である。ただこの安っぽい歴史観は靖国の尊厳を傷つけるものである。私は真剣である。この展示を続けるならば、私は靖国をかばえなくなるとまであえて言う。(おかざき ひさひこ)


http://www.sankei.co.jp/news/060824/morning/seiron.htm


  

そして、こんな記事が。↓


靖国・戦史博物館、展示内容変更へ 歴史観が一面的と


靖国神社が運営する戦史博物館「遊就館」が、館内で展示している第二次世界大戦での米国の戦略に関する記述の一部について、「誤解を招く表現があった」として見直し作業を始めたことが24日、わかった。この記述をめぐっては、遊就館の歴史観に理解を示す言論人からも「一面的な歴史観」との指摘があり、同館としても主観的な表現があることを認め、内容を変更することを決めた。同館展示物の大幅な記述の変更は異例。

内容を変更するのは「ルーズベルトの大戦略」と題して、第二次世界大戦での米国の戦略について触れた部分。

この記述では、まず「大不況下のアメリカ大統領に就任したルーズベルトは、三選されても復興しないアメリカ経済に苦慮していた」と当時の米国経済の窮状を説明。また、「早くから大戦の勃発(ぼっぱつ)を予期していたルーズベルトは、昭和14年には米英連合の対独参戦を決断していたが、米国民の反戦意志に行き詰まっていた」として、米国内に反戦世論があったことを紹介している。

その上で、「米国の戦争準備『勝利の計画』と英国・中国への軍事援助を粛々と推進していたルーズベルトに残された道は、資源に乏しい日本を、禁輸で追い詰めて開戦を強要することであった。そして、参戦によってアメリカ経済は完全に復興した」と表現し、米国は国内経済の復興を目的に対日開戦を志向したと解釈できる内容だった。

こうした記述について、同館では4月ごろから見直しの検討を始め、7月ごろから本格的に見直し作業に入ったという。

この記述をめぐっては、元駐タイ大使の岡崎久彦氏も24日付本紙「正論」で、「安っぽい歴史観は靖国の尊厳を傷つける」と指摘、同館に問題の個所の削除を求めていた。岡崎氏は「早急に良心的な対応をしていただき感動している」と話している。(08/25 03:56)

http://www.sankei.co.jp/news/060825/sha029.htm




岡崎さんは「つくる会」の教科書の執筆者で、反米的な記述をなくしたってのは有名な話だけど、↑の靖国についても、ようするに、アメリカ人に気を使え、ってことでしょう。

岡崎さんは「アングロサクソン信仰理論」の人だから理解できるけど。


でもさ、古森さんの言うとおりなら、岡崎さんはこんな提言しないでしょ。


岡崎さんは、アメリカ人たちの靖国問題への視線が厳しいってことをよく知ってるからでしょう。靖国参拝賛成派の岡崎さんも、古森さんの伝えることにまったく同意しないってことでしょう。

そして、他の靖国派の人々もそれをよく知ってるんでしょう。アメリカからの視線がものすごく厳しいってことを。だからこそ、靖国神社がこういう判断したんでしょう。古森さんが伝えることを靖国神社周辺の人たちが信頼していたら、こんなことしないでしょう。

古森さんの伝えてることがおかしいってのは(ほんの一部の意見を大多数のように装ってるのは)、靖国神社や靖国派の人々によって証明された、と言っちゃっていいかと。よね?




それはそうと、靖国神社さんと靖国派のみなさんの、なんたるへタレっぷり。


「中国侵略についての記述についてはすまんかったけど、アメリカについては全然すまなくない!」って態度ならまだわかるけど、その真逆ってなによ・・・・・・なんか、僕まで悔しい気持ちが湧いてくるんだけど。


岡崎さんって、リアリストっぽいところもあるのに、なんで「つくる会」系なんだろう?って前は思ってたけど、この路線って、対米関係で傷ついた心を癒すための反中韓・愛国ナショナリズムってかんじで、たちが悪い。

岡崎さん自身は、そんなに反中韓・愛国ナショナリズムを煽らないけど(たぶん)。というか、岡崎さんの場合、アングロサクソン信仰をモロ出しして元も子もないから、「誇り」だの「自尊心」だのそういう次元じゃないし。


でも、古森さんなんかはまさにそういう系。

抑圧移譲というか、なんというか、正直、もっとも醜いナショナリズムの形ような気がする。

全然美しくない。

全然「美しい国へ」じゃない。「誇り」も「自信」も持てない。んじゃないかな。




というか、マジで靖国神社もこの路線に乗るの? 

それって、靖国イデオロギーからすりゃ、まさに英霊への冒涜じゃないの?アジアの平和と有色人種の自由のために白人たちと戦ったんじゃないの?名誉白人にしてもらうために白人にひざまずいて、その埋め合わせとしてアジア人に対して傲慢になるって、そりゃ、正反対じゃん。頭クラクラしてくんだけど。







最後に、加藤紘一さんのサイトから。



自宅全焼という事件が起きてから、1週間が経ちました。

犯人に対する怒りはもちろん強いのですが、少し客観的に今回の事件を見る余裕も生まれてきたように思います。

犯人は65歳、自分と似たような年齢でした。また、どうも母が散歩に出かけたのを見届けてから、ガソリンを撒いて火をつけたのではないかという風に思える部分もあり、本人に対する憎しみの感情に向き合うというよりは、どうしてこんなことをする人が生まれてきたのか、何が彼を追い込んだのか、ということを考え始めています。

たぶん、彼もいろんな意味での閉塞感があったでしょう。割腹自殺を図った直前、実家の近所にある食堂で最高の品――1300円の天丼――を1時間かけて食べています。そのあとにはポケットに500円しかありませんでした。そして、車の助手席には、雑誌『SAPIO』が転がっていたといいます。(以下略)


http://www.katokoichi.org/



この後、過剰流動性や根無し草系の話をするんだけど、処方箋に国家を安易に持ってくるんじゃなくて、身近な絆からって発想みたいね。





靖国問題について
ナベツネ on NYT  ヤスクニとソフトパワー
ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 1
ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 2
ヤスクニ・リターンズ  靖国参拝と海外反応 3
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by mudaidesu | 2006-08-27 20:02 | ナショナリズム


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