キリスト教徒とイスラム教徒の戦争。

ryoddaさんおすすめの『キングダム・オブ・ヘブン』を去年の年末だけど観た。

すげーおもしろいじゃないですか。

最初は「なんだか地味な映画ですね」と思ったけど、途中から派手派手。わーい。




リドリー・スコット好きとか言っときながら、この映画だけはなぜかノーマークだった。この手の西洋中世ものにはあまりそそられないってのもあるけど。十字軍ネタだってのを知らなかったし。

ちょうど『世界の歴史 8 イスラーム世界の興隆』(中央公論)読んだ後だったんで興味深く観れた。ただ、この本に書いてあることと細かいところが違ってたんだけど、まあそれははいいや。


オーランド・ブルームは悪いとは言わないけど、カリスマ性がまったく発揮できてなくて微妙。最後まで普通のにーちゃんにしか見えなかった。というか、脇役がイケてるから、比較するとオーランド・ブルームは冴えない。

というか、仮面の王様のカリスマ性がすごかった。ちょっとしたしぐさとだるそうなしゃべりだけで、すさまじい雰囲気を出してた。誰だよ?仮面かぶったままだから無名の人?無名の人がそんなに凄まじいわけないか?すげーと思うのは俺の気のせいか?とか思ったけど、エドワード・ノートンだった。さすが、というか、すげっ。

サラディンとの直接交渉のシーンは、台詞は数個だけだけど、鳥肌モノだった。



それにしても、この映画もなんだか妙に政治的に正しいような気がする。正直、序盤から中盤にかけては、あまりに政治的に正しすぎで毒がない描写ばかりで、ちょっとうざかった。


それでも、アメリカ主流大作映画でこんな描写するなんて信じられない。

キリスト教軍の残虐性をたくさん描く。主人公たちに、エルサレム攻略時のムスリム皆殺しの話をさせたりして、その他いろいろ「反十字軍」的言葉を何度も言わせる。身内のキリスト教徒に十字軍のことを「ヨーロッパからやってくる狂信者たち」とか言わせたり。

反対に、イスラム教側の行いで「ひでー」って描写がない。映画の中でイスラム教軍が戦うときは、キリスト教軍側が協定を破って一般ムスリムたちを虐殺したときだけ。サラディンのエルサレム奪還戦も、キリスト教側が一般ムスリムを虐殺したことがきっかけと描く(実際はそんな単純じゃないでしょ)。

イスラム教軍がエルサレムを奪還した際も、キリスト教徒の安全を保証し、ムスリム皆殺しをした十字軍との違いを描く。サラディンもイケてる人物として描く。


まあ、歴史の本の通説に従って(細かい部分で↑の本とは違うところがあったけど)、今の感覚からして両軍のよさげなところを強調して描けばあんなかんじになってもそんなにおかしくはないのかもしれないけど。



それにしてもほんと世の中変わったのかなー。ryoddaさんは、リドリー・スコットは「政治的正しさ」を気にせず、エンタメに徹すると言ってたけど、『GIジェーん』なんかと比べるとえらい違いかと。

『GIジェーン』じゃ、リビアに落ちた衛星を回収するために違法に特殊部隊を潜入させて、リビア兵をぶち殺したりのしながら回収成功させて、みんなで「いえーい!やったぜ、わーい!」って次元だし。



それで、『キングダム・オブ・ヘブン』の特徴としては、個人の信仰を擁護するが、あくまでそれは個人や人々のためになればであって、個人や人々を不幸にさせることを正当化するような信仰は擁護しない。

宗教ナショナリズム的なものを否定し、代わりに世俗ナショナリズム的なものを擁護する。その世俗ナショナリズムもあくまで人が中心であって、土地や領土や街ではない。

いわゆる愛郷的なパトリオティズムみたいなものさえも、どうでもいい、という視点。それが、最後のエルサレムを追われながらも人々が助かるということだけに歓喜する(歴史の本では違うみたいだけど)シーンで表現されてるのだと思う。



ところで、サラディン役の俳優だけど、この人はオリバー・ストーンの『アレキサンダー』でダレイオス三世やってた人じゃない?と思った。あの映画じゃ、ダレイオス三世があっさり逃走するだけでみっともない役(あれはあれで味があったけど)だったけど(歴史の本でも実際、ダレイオス三世は使えない奴だった、とか書いてあったと思う)、サラディン役で活躍できてよかったね。そのうち、ホメイニとかビン・ラディンの役で出てきたり。
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by mudaidesu | 2007-02-07 19:00 | 映画


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