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イラク人質問題 12  自己責任 ③


とまあ、「自己責任」とあのイラク人質問題について細かく考えてきたけど、結局、ロジックの問題じゃないんだよね。あちこちで何度も書いたけど、バッシングってのは情緒的なもの。ロジックの問題としてウダウダ考えてもあんまり意味がないというかなんというか・・・。アホらしくなってしまう。気にいらねー人は気にいらないもんだし。ムカツクときはムカツクもんだし。そういう気持ちはわからんでもないし。それが人間だし、人間のおもしろいところでもある。


イラク人質問題 10」で「結局、自己責任・・・なにが言いたかったのだろう」について書いた。それ系の話をまた。一応、「イラク人質問題 10」のところでは、「自己責任」というボキャブラリーを使って、人質本人たちを叩いてたメディアや知識人についての話。

ここでは、一般人とかの言ってた「自己責任!自己責任!」について。もう少し、というか、かなり雑というか、「ぶっちゃけ」的な話。ぶっちゃけ、「自己責任」ってどういう意味よ?と。人質本人たちを「自己責任!自己責任!」と言って叩くけど、ぶっちゃけ何が言いたいのよ?と。


「自己責任で行ってるとは思えない」とか「人質は自己責任をわきまえてない」みたいなこと言う人がたくさんいた。ほんとたくさんいた。

けどさ、意味不明。はっきり言ってわけわかんない。そもそも、当たり前の話だけど、失敗して悲惨な目に会うのは自分自身なわけで。失敗したときに、別の誰かが代わりに悲惨な目に会ってくれるわけじゃない。他の誰かが代わりに死んでくれるわけでもない。そんなことも考えないで連中がイラク行ってたわけない。考えるも考えないも、当たり前のこと。


「あれは自己責任。」って言って終わり、って人もたくさんいた。「自己責任」と言うだけで、人質本人を理性的に批判した気分になっていた。「自己責任!自己責任!」と叫ぶだけのバッシング。意味不明。だからなんだよと。

自己責任だから、助けるな?
自己責任だから、口出すな?
自己責任だから、謝れ?
自己責任だから、文句を言うな?
自己責任だから、金払え?
自己責任だから、死んでもいい?
自己責任だから、なんなんだよ?


ようするに、「自己責任。」と言うことによって、何が言いたいのか。人質本人を叩くさいに、「自己責任」と言うが何を意味してるのか。「自己責任」で終わりにしてちゃ意味がわからない。

「助けるな」なんて、というか「助ける努力をするな」なんて堂々と公の場で言える人はいないだろう。「口出すな」って、家族が?口出すのは家族の勝手だし。そんなことは当たり前なわけで。まともなロジックではありえない。というか、それって人質と関係ない。人質を叩く理由にならない。「誤れ」って、人質は拘束中だし。家族に言ってるなら別にいいけど、人質には関係ない。それに、人質の自己責任なら家族は関係ないし。「文句を言うな」って、人質は拘束中だし。「金払え」って、警察や消防に金払う奴いないし。そのために税金払ってんだし。「死んでもいい」って、そうだね。じゃなくて、その発言はありえないし。


「自己責任!」とか言って、ツバは吐きながら人質本人たちを叩いてた人に、「だからなんだよ?自己責任だからなんだよ?」と面と向かって冷静に聞いたら(そういうことしたくないんだけど)、たいていトーンダウンした。ネットならまだしも、堂々と他者の目のあるところで、「死んでいい」とか酷いこと言えないし。結局、「しょうがない」くらいしか言えない。詰問するようなことはしたくないんだけど。そんなことしても、ますます人質たちが憎くなるだけだし。そういうもん。


そういえば、「自己責任だから、自衛隊撤退するな」ってのもあったな。でも、意味不明。じゃ、自己責任じゃなかったら、自衛隊撤退はアリなのかと。たとえば、ヨーロッパあたりの豪邸で寝てた日本人が拉致され「自衛隊撤退しろ」とやられたら、撤退するのかと。

ただまあ、「自己責任だから、自衛隊撤退なし」みたいな議論は、感情の問題としては有効だった。「イラク人質問題 5」で、


ネット外では、政治家・メディアは・・・本音はどうあれ、後のパウエル発言のように人質本人たちには敬意を示しながらも、自衛隊撤退はできないと冷静に主張するだろうと僕は予想してた。というか、そうすべきだった。・・・

やっぱり、「人質への敬意を示すが撤退は無理」という議論では弱い。だから、「人質は無謀で迷惑で非難されるべき。ただでさえ撤退は無理、こんな人間のためにはなおさら無理」という議論(政府責任回避にも使えるし)で行こうと戦略的に考えたのではないかと。・・・

ようするに、「こんなダメな連中のために国策を犠牲にするわけにはいかない」ということを世間に説得しようとした。


と書いたけど、「自己責任だから自衛隊撤退ナシ」みたいのは、「こんなダメな連中のための自衛隊撤退はナシ」ってことだったんだろう。わかりやすいといえば、わかりやすい。



はやい話が、「自業自得!」って言えばいいんだよ。自業自得。それなら言いたいことわかる。「事業自得」ってのは、「わーい!ざまーみろ!」ってことだろう。ならわかる。正直でよろしい。「自己責任 10」で、「『自己責任自己責任』ってのは、お!自分の感情を正当化できるぞ、とか、お!叩くのに都合のいい言葉めっけ!ってな話。一般人は、お!下品に叩くより、これでもっともらしいこと言えるぞ、と思い、政府を守りたい人たちは、お!政府責任回避に使えるぞ、と思っただけ」と書いたけど。




あと、自己責任論で一番おかしかったのは山形浩生さん。


でも個人が負担する責任があることは絶対否定できないんだよ。国民の多くはそれを知っている。ぼくたちパンピーは、現に自分のヘマの責任はおおむね自分でとってるもの。それを無視した自己無責任論は、どんな高尚な理論に基づこうと説得力はそもそもまるでない。

・・・

そしてもっと大きな問題。自己責任否定論者は、それがその責任の裏返しの自由を否定しかねない議論だとわかってるの? この期に及んでイラクに出かけていったトホホな元人間の盾の人がいる。自己無責任論を主張するなら、あの人物を邦人保護の観点から国が責任をもって拘束しろ、という議論は十分に成り立つのだ。ぼくはそのほうがずっと怖い。

自由には必ず責任伴う 山形浩生(評論家)  朝日新聞


なんなんだろう。誰と論争してるつもりなんだろう。どこに、「自己無責任論を主張」してる人がいるのだろう。ほとんどの論者はそんなこと言ってないと思ったけど。そもそも責任なんて何%誰々にあるなんて計算できるわけじゃないけど、「人質本人たち責任ゼロ」なんて言ってた人こそがゼロでしょ。

「なんでもかんでも、人質本人たちの責任にすんな」(「イラク人質問題 10  自己責任 ①」)と言ってたわけで。そんな単純な話にするなと。「政府にも責任あんだろ」と(「イラク人質問題 11  自己責任②」)。つか、責任がいかほどだろうと、被害者なんだし、人質や家族をバッシングするのはやめろって言ったてわけで。「自己責任論」なんて人質バッシングの方便でしかないだろって言ってたわけで。山形浩生って、もっとちゃんとした議論する人かと思ってたのに。


山形浩生の文章の他の部分についてはこの方のがおすすめ。↓

自由には必ず責任伴う 山形浩生  + C amp 4 +



というか、「自己責任!自己責任!」と言ってた人は、山形さんみたいな感覚だったのかな。だから「自己責任!」って言って終わりなのかな。人質を擁護したり、バッシングすんなと言ってる人たちは「自己無責任論」を主張してると思ったのかな。↑でも言ったけど、悲惨な目に会うのは自分自身なんだから、自己責任もへったくれもないと思うんだけど。そんなことは百も承知だろ。

ようするに、「自己責任!自己責任!」の言説を使う人の頭の中には、「人質100%責任 vs 人質0%責任」って図式があったのか。

何度も言ってるけど、そんな単純な話じゃない。加害者が存在した事件。人質たちは被害者。あの事件は天災じゃない(天災だって、100%の責任にはならんと思うけど)。イラクは戦争状態(これも天災じゃない。人災)。自衛隊派遣もあった。自衛隊撤退要求もあった。などなど、超複雑。


なんか、パート12まで書いてると、話が重なりまくって、同じこと何度も言ってる。けど、気にせず、これからも同じこと書いてくと思う。
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by mudaidesu | 2006-01-16 03:06 | イラク人質事件
イラク人質問題 11  自己責任 ②


大晦日の朝生の録画を見た。「靖国問題について」で書いたことと、村田晃嗣さん(親米リアリスト)の発言が似てて驚いた・・・というのは嘘。正しいとかじゃなくて、意識してたし。村田さんをじゃなくて、リアリズムを。自分はリアリストじゃないと言いながらも、わざとリアリストっぽい語り口を織り交ぜた。「リアリズム」に関するエントリー(「ダブスタ&ゼロサム」)の続きでもあったし。普段は内向きだけど、珍しく外に向けて書いたし。その割には長くなっちゃって不親切だったけど。

というか、ここんとこ、朝生は「正論」「諸君!」系(「will」でもいいけど。笑)の論者をスルーしてるな。この前、八木秀次さんが出てたけど、アジア関係の話題じゃ勝谷誠彦さんあたりでお茶を濁してる。まあ、現実的な話するためにはしかたないけど。

ちなみに、小泉さんには「アジアで孤立戦略」があると僕は普通に思ってたんですが、森本さんも「もうわからない。アジア外交を壊してるだけ」みたいなこと言って首かしげてたし、videonews.comによると、最近は小泉さん「愉快犯」説ってのが有力なようで・・・。マジですか・・・。



朝生からもう一つ。勝谷さんが、「イラクで日本人が5人死んでいる。この人たちは日本が自衛隊を派遣しなかったら死ななくてすんだかもしれない」と言っていた。僕としては、それは香田さんだけじゃないかなとも思ったけど。

本題に入る前にもう一言。勝谷さんは、最初の三人が人質になったとき、ネットで三人や家族を叩いてた。ネット上のバッシングを支える役割も果たした・・・とそのときは思ったけど、その後のメディアその他があまりに酷かったんで、彼の日記を今読んだらたいしたことなかった・・・。僕の感覚も麻痺しちゃったのかな。

当時の朝生で、イラク人質問題やったけど、叩き派は森本敏さんしかいなかった。勝谷さんはほとんど黙ってた(師匠の橋田さんが、あの三人に優しかったからかな)。他はみんな、ありゃひでぇ、と思ってた人ばかりだった。自民党の山本一太さんもいて、立場上、多少は叩き派を擁護していたが、本音では、バッシングはひでぇ、だっただろう。

森本さんは、人質バッシングの理論的支柱になるような文章を産経に寄稿したので叩かれてしまったが、この人は「やっちまった」だけなのではないか(笑)。この人は優しい人だと思う。朝生でも、弁解せずに辛そうにだまってたし。許してあげたい(笑)。というか、国際関係(または世界政治)学の先生として、ああいう人たちを否定するなんて、絶対やっちゃいけないこと。連中のような心情を持った人間を育てるのが役割でしょう。
 

で、本題。勝谷さんの「この人たちは日本が自衛隊を派遣しなかったら、死ななくてすんだかもしれない」発言に関連して。

一応、「イラク人質問題 10」で、「拘束・監禁・死の危険の三点セット」は連中の自己責任、ということにした。三点セットは自己責任で、その後自衛隊撤退どうたらこうたらの責任やら、家族がどうしたこうしたとか、金の話とか、バッシングを被ることとかは、連中の自己責任とは関係ないだろうと。

しかし、それはあくまで、「自己責任!自己責任!」の文脈にだいぶ譲ったところで考えたらの話。話をスッキリさせるために、あえて戦線を後退させて考えたらの話。

実際のところ、その「三点セット」は純粋に連中の100%自己責任なのだろうか?


あの三人が拘束された理由ってなんだろう。いろいろあると思う。そりゃ、現地に自分の意志で行ったことで当然連中の責任はあるけど、「イラク人質問題 10」でも言ったように責任なんてすっきり計算できるわけないし。

とりあえず、第一に犯人たちの「悪意」がある(ファルージャ攻撃を止めるためにしょうがなかったって話もあるし、そんなに悪い人たちじゃなかったようだけど、とりあえず、話をすっきりさせるために悪意のある犯人としておく)。一番責任あるのはこの人たち。(高遠さんは、この人たちに対して「バカなことやってんじゃねーよ」と直接言ってたらしい。)なんたって加害者なんだから。そして、人質たちは被害者。


で、連中はミスしたんだろうか。無茶もしたんだろうか。ミスや無茶の責任もあるんだろうか。拘束直後から、メディアは「無謀」だの「軽率」だの「無責任」だのなんだの書いて叩いたけど。でも、江川さんもしつこく言ってたけど、んなことわかったわけないじゃん(「イラク人質問題 4」)。実際、何があったのかも全然わからない状況で、何テキトーなこと言ってんだよと。大手メディアなんて、イラクから引き上げちゃってたくせして。現地のことなんか全然わかってなかったくせに。

三人はダメだけど、橋田さんはOKってのも意味不明だった。橋田さんについて何もわかってないときから、橋田さんはOKって・・・。橋田さんの方がはるかに無茶だったかもしれないのに。ようするに、どっちがムカツクかってだけ。一部のメディア的には、どっちが国家にとって邪魔か。勝手に死んじまって国策の邪魔にならないか、人質になって「迷惑」かけるか。または、家族がムカツクかどうか。基準はそっちなくせに、なんもわからん時点で本人たちについて「こっちは無謀。こっちはOK」ってすごすぎる。まさに、無茶。


高遠さんなんて、数ヶ月イラクでやってたんだから、イラクのミクロな状況について一番詳しい日本人の一人だったはず。そりゃ、結果的に、拘束されちゃったんだから、ミスはあったのかもしれないが、あの時点で素人がギャーギャー言うのは無茶すぎ。いまだって、さっぱりわからない。



あと、連中は流れ弾や爆発に巻き込まれるくらいは覚悟してただろうけど、拘束・人質ってのは新たな展開だった。突然、拘束事件が続発するようになったわけで、それに対する準備をするなんてムリだっただろう。あの三人は最初の方(第二弾)だったし。まさか、あんなに続発するなんてみんな予想してなかった。連中はパラダイム転換に立ち会ってしまったと思う。無茶って、パラダイム転換をやった加害者たちの方が無茶だって。

19世紀から、赤十字などは戦場で人道活動をやってきたし、ジャーナリストは報道してきたが、心配すべきは流れ弾で、戦闘に巻き込まれることだった。ついに、外国人であるだけで、国際社会に対しての人質として使われることが現実になってしまった。メディアの発達で、戦争はお茶の間のイベントにもなってきた。メディアを使って、遠くにいる国際社会の人間にまで要求を突きつけてくる。



なぜ彼らが拘束されたのか、には他の要素もある。まずはイラクがめちゃくちゃだから。なぜめちゃくちゃなのか。いろんなのに責任がある。アメリカ、フセイン、イラク政府、イラク国民、国際社会などなど。そして、最も重要なポイントは米軍のファルージャ攻撃にあると言われてた。拘束・人質の直接の引き金はファルージャ攻撃だと。


↑で、自衛隊撤退どうたらこうたらは、人質たちの自己責任とは関係ないって話をしたが、自衛隊撤退どうたらこうたらについて、日本政府の責任はどうだろう。「人質問題 10」で、とりあえず三点セットは連中の自己責任とムリヤリした(↑でそうとも言えないとしたけども)。自己決定した上での行動によって被ったということで。

これは↑の勝谷発言に関連することだけど、日本政府も自己決定で自衛隊派遣をした。日本政府も自主的に決めて行動した。その結果起きたことについてはどうなん?どこまでが政府の責任なんだろうか。人質連中の「自己責任」をあんなにインフレさせたんだから、日本政府の自己責任もインフレさせてもいいかもしれない。ま、そんなことはしないけど。


本気だったかどうかはわからんけど、犯人グループは日本政府に要求を出した。自衛隊派遣によって、犯人側にとって被害者が余計に使える存在になった。自衛隊派遣によって、被害者の重みがガ-ンと上がった。「撤退しろ」という要求を出せるようになった。

政府に自衛隊撤退要求が出る人質事件になったのだがら、自衛隊派遣(政府の自己決定)と事件(特に人質・要求の部分)の因果関係はかなりあるでしょう。日本政府に対して要求が出てるんだし、その要求は日本政府の自己決定と関係ある。だから、日本政府も責任主体の中心になったわけだ。こっからは日本政府の責任の問題にもなる。


あの人質作戦は、みんな「なるほどねえ。こういう戦略できたか」と思う程度には、合理性はあったと思う。「なんで?日本人が?関係ないじゃん?」と、日本人が人質にされたのを不可解だと思った人なんていないだろう。日本人が人質になって、犯人側が日本政府に要求を出してきたことは十分理解可能だった。自衛隊派遣、日本政府の自己決定が無関係だと思った人はいないはず。

「なぜ拘束されて、人質事件になったと思いますか?」と聞かれたら、「日本政府がファルージャ攻撃してたアメリカに協力して、自衛隊を派遣してるからじゃないですか」みたいに答えるのは全然不思議じゃなかった。というか、みんなそう思ってたでしょ。テレビに出てた専門家もみんなそう言っていた。

これをよく理解してるからこそ、政治家やメディアや知識人は「人質自己責任論」でいった。バッシングに乗って、さらに煽った。政府の責任回避のために。国策擁護のために。世間が「自己責任論」を大真面目にとってくれてほんとにホッとしただろう。



とにかく、あの問題で何が誰の責任なんて簡単に言えるもんじゃない。何がどうなってこうなったということを理解しようとすることが大事。ほんとに複雑だった。パラダイム転換まであった。「雪山遭難」とかに例えるのは思考停止の極みだったと思う。そもそも、自然災害じゃないし。すべてに人が関わってる。




ニュース

イラク武装勢力、拉致のフランス人技師を無事解放
独人質は元スパイ? 情報機関に協力か
Female U.S. journalist kidnapped in Iraq
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by mudaidesu | 2006-01-09 18:02 | イラク人質事件
イラク人質問題 10  自己責任 ①


で、「自己責任!自己責任!」についてだけど、簡単に言っちゃえば、あのとき人質たちが命の危機を被ったことで<自己責任>は消費された。それ以上、さらに責任が生じるはずがないと思う。そもそも、「責任」なんて計算できるわけじゃないし、誰の責任がいかほどかなんてすっきり示せるわけもない。裁判でもやるならまだしも。

「自己責任!自己責任!」ってのは、自己の決定においての、自己の責任においての行動なら、それにともなうリスクを被れって話だろう。だから、連中は命の危機を<自分>で被った。リスクを負うも何も、拘束・監禁・死の危険の三点セットを実際に経験した。自分でリスクを負うだけじゃなく、自分でリスクも被った。自分の行動のせいで、自分たちが危険な目に会った。それで終わりでしょ。責任は自分で取った。


これで終わりのはずなのに、<責任>という概念が、なんかインフレ起こしたというかなんというか、なんでもかんでも連中の責任にしたがる空気があった。どこまでが連中の責任なんだよ!と思った。


自衛隊撤退要求も連中の責任かよ!政府が使った金もかよ!これも結果?自分のせいで火事になったら、その結果の消防代まで払うのかよ?警察や消防の調査代も?どこまでが責任?どこまでが被るべきリスク?どこまでが連中の行動による結果?もしかして、バッシングも被るべきリスク?もし、日本に帰ってきて、殺されちゃったら?それも自己責任?自分で始末つけなきゃならない?

どこで線を引くん?

三点セットのところで終わりだと思う。



なんで家族が叩かれるのか?人質の自己責任なら、家族は関係ないだろう。叩くなら人質だけにしとけよ。まさか、家族が叩かれることまで、人質の自己責任なのだろうか。自己の行動が引き起こした結果ということで。家族が叩かれることまで引き受けろ?右翼さんたちがデッカイ車で、家族の職場まで挨拶に訪れたそうだが、それも仕方がないのか?人質の自己責任なのか?

「国や国民に迷惑かけた!」って言うなら、「迷惑かけた」のは人質本人なんだから、叩くのは人質だけにしとけよ。家族まで叩くな。家族はただ自分の意見を主張しただけなんだから。迷惑かけてない。家族の発言が気に入らないならスルーすればいいだけ。人質の自己責任なら、家族は謝る必要もない。人質が勝手に自己決定してやったんだから、家族に責任なんてないだろう。


イラク人質問題 5  雑感」でも書いたけど、「家族の言動のせいで人質はバッシングされた」という言説があった。これはテレビで「知識人」(?)も言っていた。「人質問題 5」でも書いたけど、これは嘘。こういう言説を吐いた人は、人質バッシングを後ろめたく思っていたから、言い訳として使ったにすぎないと思う。いかに、人質バッシングがおかしいか自覚してるからこそだと思う。家族の言動なら「道徳論」でごまかせると思ったのだろう。

もちろん、「イラク人質問題 1  家族」 で触れたように、家族が何を言おうと勝手。しかも、「犯罪被害者」である愛する家族の一員が「生きたまま焼き殺される」かもしれないという極限の状況にいた一般人の言動なんだから、とやかく言う神経が信じられない。また言うけど、気に入らなかったらスルーしろよ。家族のためを思うからこそ、戦略的にどうだったかという議論はありえるが。

けど、100億歩譲る。家族の言動が酷かったとする。

なら、叩くのは家族だけにしとけよ

自己責任なら、人質は自己の行動だけに責任があるんであって、家族がどんなに酷かろうと、人質を叩くのは筋違いだろう。


「自己責任自己責任」って言葉が踊ってる割には、連帯責任求めたり、「自己」じゃない家族に謝罪求めたり、「自己」じゃない家族の言動の責任まで背負わされたり、もうめちゃくちゃ。叩く対象も叩く理由もめちゃくちゃ。人質が叩かれるのは家族のせい。家族が叩かれるのは人質のせい。自己責任自己責任。わけわからない。両方気にイラねーってだけじゃん。



結局のところ「自己責任」うんぬん言ってる人(特に、政治家・メディア・識者)は何が言いたかったのだろうか。

① 危険な地域に行くな。特に政府が支持した戦争が行われてるところには行くな。
② 行くなら、あらゆることを想定し、できるかぎりの準備をしてけ。
③ 起こったことの後始末は自分でしろ。


結局①を言いたいだけだったのか?②、③はいくら徹底しても、何か起これば本人にはどうしようもないわけで。もし、流れ弾や爆発の巻き添えで死んだとしても、本人は当然覚悟の上だろう。けど、その後どうすんだ?遺体をどうするか、調査をどうするかとかで結局、政府の手を煩わせることになるんだろうし。自分だけで全てを始末するのは不可能なわけで。

あのときの「自己責任!のノリ」を結果的に貫徹するには①しか方法はないわけで。


死んじゃった人に、火事起こしちゃった人に、③のように「自分でケツふけよ」なんて言っても意味ない。「どこまでふけばいいんだよ」って話で、直接の被害(ヤケド、拘束、監禁、死の危険、死など)が自分に降りかかることによって、責任はとってる。とするしかない。↑の「三点セット」で終わり、にするしかない。

ところで、解放前から、「自己責任」とは他人のせいにしないこと、みたいな道徳的っぽい言説もあったが、人質たちは監禁されてて何も言ってなかったから、この文脈で人質を「自己責任!」と言って責めるのには不適切で論外。たとえ家族が他人のせいにしたとしても、叩くのは家族だけにしとけ。人質の自己責任とはまったく関係ない。


で、人間、自分のケツを全部ふけたら世話ない。これって、保守派が本来言ってたことのはず。人間は個人だけじゃ生きられない。共同体があってこそだ。自己決定・自己責任なんて幻想にすぎない、とかなんとか言ってたのが保守派のはず。なに、「自己責任!自己責任!」とか言って個人をバッシングしてんだよ。めちゃくちゃじゃん。

まあ、使えない奴は切り捨てちゃえ的な新自由主義的風潮がむき出しになったとも言えるけど。新自由主義にシンパシーを抱いてるような保守派の方々が暴走しちゃったと。んーん、でもやはり、それよりは「非国民認定」メンタリティーの方がむき出しだったな。



んで、①をいくら言っても、行く人は行くわけで。行くのは自由なわけで。となると、もうどうしようもないわけで。

今回、一部のメディアが退避勧告持ち出して自己責任うんぬん言ってたのにはすごい違和感を感じた(「イラク人質問題 4  江川紹子 & ネタ」。もし、メディアが①(行くな)を言おうとしていたなら、メディアとしては自殺行為。メディアが「行っちゃいけません」なんてありえないでしょう。そのありえないことが起こった。宮台も激怒するわけだ(「イラク人質問題 8  動揺」)。


不謹慎だが、プッと吹き出してしまったのは木村太郎さん。

木村さんが、人質三人に対して、政府の退避勧告持ち出してああだこうだ言ってた。で、言い終わったらすぐ安藤さんが、「次はバグダッドからの中継です」とか言って、バグダッドにいるフリージャーナリスト(当然、退避勧告無視)に繋いだ。おまけに、このジャーナリスト、綿井健陽さんよりもはるかに反米的な人だったのがまたスパイス効いてた。当然、木村さんとは正反対なわけで。

というか、なんなんよ?これって?大金持ちの大手メディアは、退避勧告を無視したフリーのジャーナリストを使っといて、同時に、退避勧告持ち出して、被害者を叩くって。わけわからなすぎ。ほんとに、政府広報と化してた。本人たちも矛盾は当然わかってただろうけど、政府を守るためになりふりかまっちゃいられねえ、って感じだったのかな。



ようするに、余程ベタな人(結構多いんだな、これが)以外、人質本人も家族たちも叩かれるほど悪いことなんてしてないってことは、みんなわかってたんだと思う。そもそも被害者と被害者家族だし。

一般人は、もう「人質も家族も、ムカツクから叩きたい」。ただそれだけ。(何度もバッシングは情緒的なものだからしょうがないと書いてるんだけど。)メディアや知識人はムカついたのと、国策擁護の戦略と両方。「自己責任自己責任」ってのは、お!自分の感情を正当化できるぞ、とか、お!叩くのに都合のいい言葉めっけ!ってな話。一般人は、お!下品に叩くより、これでもっともらしいこと言えるぞ、と思い、政府を守りたい人たちは、お!政府責任回避に使えるぞ、と思っただけ。
 
ただ、その余程ベタな人が、実はたくさんいたのが問題、というか、その事実を真剣に受け止めなければならないと思う。ファシズム的なものの担い手になってしまう善意の人たち。




ニュース


スーダン外務省は30日、バグダッドの同国大使館閉鎖を発表した。ロイター通信などが伝えた。「イラク・アルカイダ機構」が29日、同大使館員ら5人を拉致したとして「スーダンが48時間以内に外交使節をイラクから撤退しなければ殺害する」との声明を出しており、これを受けたとみられている。

同機構はイラク政治プロセスに対するアラブ諸国の関与に反発しており、これまでもエジプトやアルジェリアの外交官を拉致、殺害したとの声明を出している。

スーダン、バグダッド大使館を閉鎖 館員拉致で


スーダン政府が要求に従い、人質たちは解放されたよう。

Sudanese hostages freed in Iraq Aljazeera


こんな話も。

Italian peace activist freed after abduction in Gaza
Lebanese hostage released in Iraq
German captives freed in Yemen
ガザで日本人2人保護 自治政府警察当局
Five Italians held hostage in Yemen

全部に触れてたらキリない・・・。
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by mudaidesu | 2006-01-03 22:42 | イラク人質事件
イラク人質問題 9  自衛隊撤退


いきなりだけど、僕自身、自衛隊は撤退できないと思った。対アメリカについてをまったく無視しても。「アメリカさまのご意向」という変数を抜きに考えても、自衛隊撤退はちょっとなあだった。だから、余計にあの三人に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

もし僕が政策判断する立場にいたら、ようするに首相だったら、撤退という判断は絶対にできなかった。まあ、首相じゃないんだから、もっと柔軟に考えてもいいんでしょうけど。でも、首相にアドバイスする立場でも、撤退はムリと言っただろう。

ほんとにへタレでごめんなさい。


他に何も浮かばなかった。僕のスッカラカンな頭じゃなんにも思いつかない。簡単に自分の答えを出さずいろいろ考えたんだけど、いくら考えても思いつかなかった。でも、もし万が一、世論が大沸騰して首相が撤退を決断なんてことになっても、反対はしなかっただろう。自分から撤退は主張する気にはならなかったけど、撤退全然OKと思ってた。いや、僕が反対しても賛成してもどうなるわけじゃないんですけどね。


一応撤退はできないと思ってても、話聞いてムカツクのは「テロに屈するわけにはいかない」とかしゃーしゃーとしたり顔でいったりする人の方だったんだよね。「撤退しろ」という人の方がはるかに共感できた。悩みながら苦しそうに「撤退はできない」という人には共感したけど。

僕の撤退反対も本質的には「将来のために、他の日本人その他のために(この前置きがとても重要)、テロに屈するわけにはいかない」なんだけど、絶対に「テロに屈するわけにはいかない」という表現は使わなかった。絶対に使いたくなかった。これほど安っぽくて浅はかな言葉はない。というか、チープな言葉になっちまった。思考停止の象徴のような言葉になっちまった。



これは、9条問題でもそう。僕自身迷いまくってグラグラ揺れまくってるけど、どっちかというと(現状の選択肢では民主党的な)改憲派のような気がする。でもね、自民党路線(主にあっち系)や巷の素朴な「攻めれたらどーすんだよ!」「中国がどうたらこうたら」系(今の改憲の論点はそこじゃないよ。論点は二つ。国連安保理決議なしの武力行使(=アメリカの戦争)への関わり方と国連安保理決議ありの武力行使(=集団安全保障)への関わり方)や「外交は武力を背景に!俺たちは損してる!」系の改憲派と比べると、ずっと共感するのは護憲派の方。ここでちょっと書いたけど、改憲派の重鎮の小林節の気持ちがほんとによくわかる。おかしな改憲論に出会うたびに、僕の改憲への意欲が萎える。

最近、特にイラク戦争後、ますますグラグラユラユラしまくり。というか、6、7年前は躊躇なく改憲!とか思ってたような気がする。それから、だいぶ護憲よりにシフトしてきてる。流行に逆行。それに、ここのところの小泉さん周辺の改憲戦略は、靖国その他で中韓とわざとモメて改憲の世論構築をしながらのような気がするので、こういうあやうい「不安を煽る」戦略には乗れない。ついでに、アジアで孤立しているという批判はあまり意味がない。わざと孤立しようとしてるだろうから。

僕は一応、日本人を信頼してるから、最近のファナティックなナショナリズムや「つくる会」みたいのが盛り上がれば盛り上がるほど、改憲への世間の不安感が高まると信じてる。あっち系の人たちは改憲のイメージ悪化に寄与しちゃうと思う(その点、西村真悟の存在は改憲のイメージを著しく悪くしてたので、彼の排除で得するのは改憲派)。実際、僕の中ではそう。改憲派がまともな人たちばかりで、あっち系の人が全然目立たない状況だったら、それこそが護憲派にとっては脅威だと思う。

で、おそらく、改憲の国民投票ではノンに入れると思う。もちろん内容次第だけど、国民投票にかけられる案は僕が賛成可能なものになると思う。で、実際に国民投票やるなら確実に過半数とれると確信してるだろうし、五分五分の世論じゃ国民投票はやらないと思う。そういう状況なら、改憲が決定的な状況なら、反対がいるということを示すためにもノン(たった一票ですけど)。乙女じゃないけど、僕の心は複雑です。

そういえば、videonews.comで、右翼(?)の小室直樹(宮台真司の師匠で丸山真男の弟子)がリアリストぶりを発揮してた。小室さんは日本国憲法や9条を自著ではボロクソ言ってる。この人は近代主義者なんで、その立場からの批判。だから、すごくまとも。その小室さんが、日本人はまだ憲法作れる民度じゃないし、9条あった方が得だから、アメリカさんには「改憲しようとがんばってるんですが、なかなか世論が乗ってこなくて上手くいきません」みたいなことを言いつつ今のままでいいよ、みたいなことを言ってた。保守本流的な議論。



話だいぶ飛んだけど、自衛隊撤退の話にもどると、あーあ、だから、(二年前の)選挙で民主党が勝つべきだったんだよ!とつくづく思った。民主党でも自衛隊派遣したかもしれないけど、それならそれでもっともっと議論が起こっただろうし、いろいろなものが見えてきたと思う。

やっぱりね、政権が自分でやった政策を変えるのはめちゃくちゃ難しい。そうそう自己否定はできるもんじゃない。民主主義がなかなかイケてるシステムなのは、政権交代が可能だから。政策をドラスティックに変えることが可能だから。(ブッシュの一期目のABC(Anything But Clinton とにかくクリントンと違うことをやる)みたいなはアホだけど。)

おまけに、今の日米関係みたいに政権同士の信頼関係のもとでの政策ならとくにそう。政権変えなきゃ、こういう政策は変えられない。悲しいけどそれが現実。せめて、何十万人が官邸・国会取り囲むくらいのことが起きなきゃ。


でもね、駅でやってた、自衛隊撤退署名はした。用事があって行けなかったけど、首相官邸前のデモにも行こうと思った。矛盾してんだけど。

でも、フィリピンがサクっと撤退しちゃったのを見て、ありゃ?と思った。もしかして、撤退可能だった?とか思ったりもした。イラクや中東で働いてるフィリピン人が多いっていう日本とは違う条件もあったけど。おまけに、フィリピンでは世論が撤退支持だったし。というか、フィリピン世論はちゃんと宮台真司(「イラク人質問題 8  動揺」)が言うような他者の境遇への想像力を発揮した。

フィリピンってイスラム系の反政府組織と年がら年中モメてるから、テロとはなんぞやについてのフィリピン人の皮膚感覚は日本人より優れてるはず。テロに関してナイーブな考えは持ってない。フィリピン政府なんてゴリゴリ・リアリストで、めちゃくちゃ冷徹に政策決めてるはず。

となると、テロにうといくせに、知ったかで「テロに屈するな!」とか叫ぶ日本人の言葉がみょーに空疎に感じてくる。ノンキだなあと。なんかそういうのが嫌なんで、自衛隊撤退反対でも、「テロに屈するわけにはいかない!」みたいなありがちな表現は絶対に使わなかった僕だけど、結局中身はたいしてかわらず、ノンキな一人なのかも。
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by mudaidesu | 2005-12-26 22:52 | イラク人質事件
イラク人質問題 8  動揺

ここで触れた、人質になっていたドイツ人女性が解放されたようです。

イラクで拉致のドイツ人女性、無事解放 ドイツ政府発表  朝日新聞


ここで触れたアメリカ人は、ここでは殺されたとの報道でしたが、なんか射殺する映像を武装勢力側が出したみたい。

Iraq group posts video of U.S. hostage's 'killing'  Reuters



で、話は変わりますが、イラク人質バッシングは、人生で最も衝撃を受けた出来事の一つだった。人質事件が起きたときどう感じたか。とにかく、衝撃だった。やっぱり、日本人があんなことになると衝撃だった。誰が拉致されても殺されても悲しい話なんだが、かわいそうとは思うけど、正直な話、動揺はしない。

日本人が、となると、動揺した。これは驚き。人質事件のようなことが起こったことにもそれなりに驚いたが、自分が動揺したこと自体にびっくりした。やっぱり自分は日本人なんだなあと。同胞がああいうことになると、感じ方も変わるんだなあと。

バッシングしちゃった人たちも、ある意味、動揺したのかもしれない。そして、その動揺を自分なりに整理する方法としてバッシングを選んでしまったのかもしれない。被害者を他者化する、という方法で。自分とは違う、と切り離すという方法で。自分の中であの出来事を整理しようとしたのかもしれない。動揺してしまい、それをなんとかしようと、自分の中でとりあえず答えを出そうとした結果なのかもしれない。


あと、もう一つ僕が動揺した理由は、やっぱ、知り合いとかにNGOの人や、そういう道に進もうとしてる人がいたからかな。ジャーナリスト志望の人や元ジャーナリストの人もいた。元軍人で人権NGOやら援助NGO志望の人たちもいた。

(そういえば、元シオラレオネ(いつになっても国名を覚えられない)政府軍大佐がクラスメートにいたのを思い出した。あんまり細かい話はしなかったけど、頭キレキレだしとてもきちんとしたオッサンでした。こわい話が出てくんじゃないかとビビって、内戦の話はあまり聞けなかった・・・。シオラレオネといえば、国連平和維持軍数百名(ザンビア兵とケニア兵と国連職員)が反政府軍によって拘束されたことがありました。全員無事釈放されましたが。他の事件で殺された国連関係者はたくさんいる。)


話飛んだけど、なんかすごくシンパシーを抱いたんだよね。あの三人に。これは、バッシング当時、宮台真司が何度も何度も言っていたことに関係するかもしれない。↓


現地NGO活動について「今回行かなかったが自分もいずれ行く」「自分も行きたい」 「周りに行っている人が沢山いる」とのコモンセンス(共通感覚)さえあれば、「費用を 払え」は出て来ない。

逆に言えば「費用を払え」大合唱は、危険を顧みぬNGO活動に対し「明日は我が身」 と連なるコモンセンスを持ち合わせるかわりに、「奇人扱い」して切り離すだけの、国辱 的な民度の低さをさらけ出す。

元人質のうち二人が、同じ日にまず弁護士会館で日本人記者相手に、ついで外人記者ク ラブで外国人記者相手に記者会見した。二人の発言は同じだったが、記者の雰囲気が対照 的なのだ。

日本の国辱記者どもは「迷惑をどう思うのか」「謝る気はないのか」と頭を下げさせよ うとする。外国人記者たちは「よく帰ってきた」「ご苦労さん」という雰囲気に満ち、「明日は我が身」の想像力を示す。

日本の記者どもの国辱ぶりは、NGOで人命救援活動をする者を「奇人」としてカット アウトする民度の低さに留まらない。現地で記者活動をする者をさえ「賤民」としてカッ トアウトする大手メディアの堕落ぶりも同じだ。

・・・

「マスコミは第四の権力」(立法・行政・司法のチェック&バランス機関)が聞いて呆 れる。この「政府ケツ舐めメディア」ぶりを証明するのが、現地入りして取材する者らへ の「立場可換の想像力(同感可能性)の不在」という異常現象だ。

各国記者に散々尋ねられた。日本の記者どもの一種異様な雰囲気、政府の意に従わざる 者をあたかも非国民呼ばわりしかねない傍若無人ぶりは、何なのかと。私は日本の記者ど ものマヌケぶりによって恥辱を浴びたのだ。

右翼思想からみた、自己責任バッシングの国辱ぶり  宮台真司

宮台さん、少々暴走ぎみです。まあ、ほんとに宮台さんも怒り心頭だったようで。その後、安田さんと渡辺さんをvideonews.comに呼んだときも、宮台さん、二人を差し置いてしゃべりまくってました。本人も、のぼせちゃってごめんなさい、とか言ってたような。


僕自身は、自分の欲望に忠実に生きたいと思っていたし、自分にとって文明的で文化的な生活をしたいと思ってた。この場合の文明とか文化は、僕たちが日本や他の先進諸国で享受している消費文化のこと。人権NGOやら援助NGOとかに行く気なんてさらさらなかった。

第三世界とか旅行してても10日くらいで「文明」が恋しくなる自分を発見。現地の食い物も大好きなんだけど、一週間に一回くらいはマックやらピザハットあたりにおじゃましたりした。中東まわってたときなんて、イスラエルに行って、ほんと安心したというかホッとした。

そして当然、イラクなんかに行く、情熱も怒りも勇気も度胸も使命感もなんもない。そんな自分だからこそ、そういうものを持った人間たちがあんなことになっちまってと動揺した。そういう知り合いがいたからそれなりに自分と身近なことなんだけど、自分には絶対できなようなことをやっている人たちだからこそ、めちゃくちゃ動揺した。

おそらくね、高遠さんたちもこういう気持ちだったと思うんだよね。僕が彼らのことを心配したように、彼らはイラクの人たちのことが心配でならなかった。いてもたってもいられなかったと。僕なんて、イラクの人たちやその他世界中の人たちのことを心配したって、別に何をするわけでもない。高遠さんたちを心配したって、何もしなかった。高遠さんたちはなんかする人だったんだよね。

だから、ほんとショックだった。ああ、あいつら死んじまうのかあと。


ついでに、ネットでは、ボロクソ叩きがはじまってんだろうなあと。一応チェックしたら、まあ予想通り。驚きもなんもない。驚いたのは、 「イラク人質問題 5  雑感」でも書いたように、その後のメディアや政治家たちの反応。マジですかー、とポカーンとしてしまった。
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by mudaidesu | 2005-12-19 22:09 | イラク人質事件
イラク人質問題 7  現在


武装勢力によると、拘束されていたアメリカ人(武装勢力によると「security consultant」だけど、実際はただの電気技師の可能性も)が殺害されたよう。アメリカ軍の通訳やってたエジプト人も拘束されてたようで、こちらも殺害されたよう。どちらも、確認はされてないとのこと。

Egyptian hostage found dead in Iraq  アルジャジーラ(ロイター) 12/11


クリスチャン団体(CPT)の4人の人質のデッドラインは木曜日でしたが、デッドラインが土曜日まで延長されてました。デッドラインは過ぎましたが情報なし。ドイツ人とフラン人についても情報なし。

興味深い動きとしては、アルカイダのユーロッパ大使と言われているアブ・カタダ(発音不明。指名手配中)が、イスラムの教えに従って4人を解放するべきだというビデオ・メッセージ(アラビック)を出したらしい。それが中東で放送されてるよう。

追記:カタダは指名手配中じゃなくてイギリスの拘置所の中(ヨルダンへの移送予定?)でした。拘置所の中からビデオ・メッセージを出したようです。


あと、最も長い歴史(1928-)を持ち、最も大きいイスラム原理主義(復興運動)組織のムスリム同胞団の最高指導者が、4人の拘束はイスラムの教えに反すると声明を出したそう。いかなる目的、信仰、思想を持っていようと罪のない人々を人質とすることをイスラムは禁ずると。拉致はイラクのイメージを悪くするだけだと。

Concern grows for Iraq hostages  BBC 12/11
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by mudaidesu | 2005-12-12 02:22 | イラク人質事件
イラク人質問題 6  続発


フランス人
バグダッドでフランス人技術者拉致か  CNN 12/5
Frenchman kidnapped by gunmen in Baghdad   IHT 12/5
French engineer seized in Baghdad CBS News 12/5

アメリカ人
Video: U.S. Hostage Taken In Iraq CBS News 12/6
Update 3: Iraq Video Claims to Show Captive American Forbes 12/6


なんかいろいろ起こってますね。この一週間程度の間に4つ目です。

フランス人の方はNGOに所属するエンジニアの人のようです。CNNでは「企業の技術者と見られる」とありますが。拉致されたときの状況以外、細かい話はわからないようです。

アメリカ人の方は、「フォーブス」の記事によると「security consultant」らしいので民間軍事会社の人でしょうか。拘束させているビデオは流れたようですが、まだ確認はされてないようです。武装勢力側の要求は、48時間以内に拘束されているイラク人を全員釈放しろ、のようです。

最近の拉致・拘束が連発していることについて、CBSの記事はフセインの裁判と12月15日の選挙も影響しているのでは、みたいなことを書いています。


ちなみに、こちらで触れたクリスチャン団体の4人の人質たちですが、武装勢力側が示したデッドラインは木曜日(8日)です。

このクリスチャン団体のHP上での最新の声明です。仲間を拉致・拘束し人質として使っている武装勢力へ向けてのメッセージです。↓

Iraq Team Statement [6 Dec 2005, 7:00CST]

"We are very concerned about our friends. We would very much like to know that they are in good condition.

(私たちは友人たちのことをとても心配しています。彼らが良い環境にいることを、良い健康状態でいることをとても知りたいです。)

It is our most sincere wish that you will immediately release them unharmed.

(心からお願いします。いますぐ彼らを無傷で解放してください。)

While we believe the action of kidnapping is wrong, we do not condemn you as people. We recognize the humanity in each person, and respect it very much. This includes you, our colleagues, and all people.

(誘拐・拉致・拘束はいけないことだと信じてるけど、私たちはあなたたちを人間として非難はしません。私たちは一人一人の人間を大切にします(この訳だいぶあやしい)。そして、もちろん、あなたたちも私たちが大切にする人間です。私たちの仲間も。そしてすべての人々も。)

We believe there needs to be a force that counters all the resentment, the fear, the intimidation felt by the Iraqi people. We are trying to be that force: to speak for justice, to advocate for the human rights of Iraqis, to look at an Iraqi face and say: my brother, my sister,

Perhaps you are men who only want to raise the issue of illegal etention. We don't know what you may have endured.

(私たちは、イラクの人々が感じているすべての憎悪、不安、恐怖を払拭できるような「力」(force)が必要だと信じてます。私たちはその「力」になろうとしています。正義のために声をあげ、イラク人の人権を擁護し、イラク人の顔をしっかりみて、そしてこのように声をかけることによって。

友よ(my brother, my sister)、あなたたちはただ違法な(米英軍によるイラク人の)拘束についての問題提起をしたかっただけでしょう。私たちはあなたたちが何を耐えてきたかはわかることができない(想像もつかないくらい大変な目に会ってきたのでしょう)。)

As you can see by the statements of support from our friends in Iraq and all over the world, we work for those who are oppressed.

(イラクの仲間や世界中の人々からの声明によって、あなたたちもわかるように、私たちは抑圧されてる人々のために頑張っています。)

We also condemn our own governments for their actions in Iraq.

(私たちは、イラクであんなことやってる私たち自身の政府を非難します。)

Please, we appeal to your humanity to show mercy on our brothers and let them come back safely to us to continue our work.

(お願いします。慈悲の心を示して仲間を安全に解放してください。そして、私たちの仕事を続けさせてください。 )

May God spare our friends, and all the people of Iraq any further suffering."

(神さま、仲間とイラクの人々を苦しみから解放してあげてください。)

Christian Peacemaker Teams


なんかせつないですねえ。テキトーな訳でかんじがあんまり出てないですけど。この団体のサイトには、人質になってる人たちの家族のメッセージもあります。まあ、武装勢力側を批判するなんてアホなことはするわけないのは当然なんですけどね。ほんの少しでも武装勢力に同情を示してもらうために、やれることをする。ただそれだけ。

いろいろなニュース記事には人質たちがどういう人物なのか、どういう活動をしてきたのか書かれています。もちろん、この人たちを叩くようなアホな記事はいまんとこ見当たりません。
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by mudaidesu | 2005-12-08 04:42 | イラク人質事件
イラク人質問題 5  雑感


ところで、人質バッシングの一番の原因は「家族の言動」との見方があったりする。家族の言動が酷かったから、人質まで叩かれたと。というか、そういうことを言う人がたくさんいた。

これは当時の現象の一部しか捉えていない。日本人が拘束されたというニュース速報が出た直後から、ネット上では酷いバッシングが起こっていた。叩く理由は「サヨ、朝日、反日、自作自演」など。自作自演の根拠の一つとされたあの「ヒミツの大計画」が登場したのはニュース速報から一時間後くらいらしい。

そして、読売新聞や産経新聞はネットを観察していたのかどうなのかわからないけど、翌朝(だよね?)から「人質本人」叩きをはじめた。そして連日、社説、一面コラム、社会面、識者のオピオン・コラム等々で「人質本人」叩きを展開。読売新聞なんて、一日に四ヶ所で叩いてたこともあった。

読売や産経の人質叩きの内容は、「退避勧告が出ているところに行くなんてケシカラン」的なのが多かった。産経には、自作自演をほのめかす文章もあった。一面コラムで、犯人たちの声明文が日本の左翼っぽいという話を聞いて「なるほどと膝を打った」、とか書きながら。政治家たちも「人質本人」を批判していた。


たしかに、「家族の言動」にムカついた人もいただろう。しかし、あくまでも「家族」叩きは「人質本人」叩きのおまけだった。家族がどうであろうと、「人質本人」たちは叩かれていた。大手新聞が連日あんなに叩いてたし、おまけに週刊誌でも叩いてたんだから。

僕としては、一般人がムカつきバッシング(ネット含む)するのは嫌悪するけど、ある意味、仕方がないとまで思ってる。しかし、あのバッシングが異様で、非常にコワイと思ったのは大手メディア、政治家、知識人総出で行われたから。


僕が注目したのはネット外(大手メディアや政治家など)がネットの流れに「乗った」こと。肯定はしないけど、一般人がある種の感情(差別感情など)を抱くのは仕方がないし、被害者・家族の言動にイラつく人は常に存在する。残念ながら。だからポイントは、いわゆる「俗情」に大手メディアや政治家や知識人が「乗る(媚びる)」かどうか。「乗る(媚びる)」ことによってその「情」が増幅される。これはやめてくれと思った。「ナチュラル・ボーン・キラーズ vs ノーと言える中国」や「靖国問題について」とかでそういうことちょっと書いてきたけど。


ネット上で「サヨ叩き」の文脈(建国義勇軍事件のようにお約束のネタとして「自作自演」指摘含む)でバッシングが起きることは、この事件が報道された瞬間に予想できた。しかし、ネット外では、政治家・メディアは別の文脈で議論を展開すると僕は予想した。本音はどうあれ、後のパウエル発言のように人質本人たちには敬意を示しながらも、自衛隊撤退はできないと冷静に主張するだろうと僕は予想してた。というか、そうすべきだった。

しかし、ネット外もネットの流れに乗った。ほんとは別々の動きかもしれないが、多少は影響与えたと思う。というか、はじめてネットが本格的にネット外の論調に大きな影響を与えた記念すべき出来事だと僕は思ってる。ネットとネット外がシンクロし、お互いに正当性を与えながらバッシングが増幅していったと思ってる。

もちろん、大手メディアや政治家や知識人は本音でムカついて冷静さを失った可能性もある。

でも、やっぱり、「人質への敬意を示すが撤退は無理」という議論では弱い。だから、「人質は無謀で迷惑で非難されるべき。ただでさえ撤退は無理、こんな人間のためにはなおさら無理」という議論(政府責任回避にも使えるし)で行こうと戦略的に考えたのではないかと。江川紹子がなげくように「冷たくなってしまった」のではなく、あくまで意図的に。冷静さを失って冷たくなって変節した(ここ参照)のではなく、ある目的を持って叩いたのではと。国策を守るという目的のために。

ようするに、「こんなダメな連中のために国策を犠牲にするわけにはいかない」ということを世間に説得しようとした。しかし、もし被害者が読売・産経等から見て素晴らしい人間だったらどうするのか?高遠さんだって、一月には産経から見てすばらしい人間だったんだし(ここ)。この「ダメな連中」戦略は使えないよな(ムリやり叩いたかもしれないけど)。だから、被害者については少し触れる程度にして、被害者の質に関係なく、自衛隊が撤退できない理由を主張するのに集中すべきだった。それが、責任あるメディアのとるべき姿勢だった。

まあ、実際としては、国策を危険にさらすような被害者が、読売・産経や文句言ってた政治家・知識人にとって、素晴らしい人間に映ることはあまりないだろうから心配は無用か。んーん、しかし読売・産経の関係者が被害者だったらどうなるのだろうか(このときのように)?おそらく、被害者については「立派・かわいそう」と簡単に触れる程度で、自衛隊が撤退できない理由に集中しただろう。なら、あの三人についてもそうしろよ。


ところで、被害者やその家族が大手メディアに連日叩かれたことがかつてあっただろうか?あまりに異様な光景だった。まさに「俗情に媚びるメディア」の典型。あいつらを餌食にしてやろう、という社会の欲望を満たす役割を率先してやった。ありゃ、ひでぇ。ちょー、ひでぇ。
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by mudaidesu | 2005-12-05 00:27 | イラク人質事件
イラク人質問題 4  江川紹子 & ネタ


このネタはあちこちで出回ってたんだけど。


戦禍の狭間、見捨てられた命 “ストリート・チルドレン”に日本人女性が救いの手
 
北海道千歳市出身・高遠菜穂子さん(33)
バグダッドで少年たちを単身救済「医者でもない私ができることを」
 
【バグダッド=岩田智雄】イラクの首都バグダッドで、米軍の掃討作戦や武装勢力のテロ攻撃の陰でイラク人社会からも国際社会からも見捨てられ、すさんだ暮らしに身を沈めている青少年たちがいる。彼らはサダム・フセイン政権の弾圧や度重なる戦争で家族を失い、廃虚となっている雑居ビルの地下室に集まってきた。そんな“ストリート・チルドレン”に、北海道千歳市出身の日本人女性、高遠菜穂子さん(三三)が単身、救いの手を差し伸べている。

産経新聞2004年1月6日


この報道は事実なんでしょうか?本当に産経新聞はこんな記事書いたのでしょうか。僕には確認できないけど、実は、小林よしのりさんが自分の本でもこの記事に触れていたんだよね。だから、よしりんを信用します。

ちなみに、そのよしりんの本はこれ。「ゴー外!!〈1〉翻弄されない視座をもつ―小林よしのりの痛快“こき下ろし”SPECIAL」。「イラク人質バッシング」批判本。

この記事を書いた岩田さんは、人質事件をどんな気持ちで見てたんだろう。この記事の直後から、バンコクあたりに移ったようだけど。




江川紹子さんが書いてたものを引用。


・・・・

読売新聞の4月10日付社説。以下のように書いたのは、事件発生の第一報から24時間も経っていない時期のはずである。

3人にも問題はある。イラクでは、一般市民を巻き込んだテロが頻繁に発生している。それを承知でイラク入りしたのは、無謀な行動だ。3人にも、自らこうした事態を招いた責任がある

同じ日の産経新聞・産経抄は、こう書いた。

誤解を恐れずにいえば、“いわぬこっちゃない”とは、本来、人質になった三人の日本人に対していわねばならぬ言葉だ。イラクでは日本人外交官も殺害されて治安悪化は深まっていた。外務省は再三、最高危険度の「退避勧告」を行ってきたのである。

三人のうち一人は週刊誌に写真や記事を売り込むフリーのジャーナリスト、もう一人もフリーライターの若者。女性だけはイラクの子供たちへのボランティア活動に従事していた。同情の余地はあるが、それでも無謀かつ軽率な行動といわざるをえない。・・・

読売新聞は、4月13日付の社説で家族に対しても批判をしたうえで、こうたたみかけた。

3人は事件に巻き込まれたのではなく、自ら危険な地域に飛び込み、今回の事件を招いたのである。自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動が、政府や関係諸機関などに、大きな無用の負担をかけている。深刻に反省すべき問題である
 

私も、いずれ「自己責任」については、きちんと議論をしなければならないと思う。

ただし「危ない所に行ったのは自分が悪い」という言い方には、私は与しない。そうした考え方は、人が助けを求めているのに、「自分さえよければいい」と見て見ぬふりをする風潮につながる。困っている人がいれば何とか手助けがしたいと思う気持ちは尊いものだし、困難な現状が明らかにされていないのであればそれを伝えるために行くことこそ、ジャーナリストの役割だと思うからだ。
 
ただ、行くからには、自分の安全を確保しなければ、本来の目的も完遂できない。だからこそ、安全対策には万全を期す必要があり、その点で3人の行動がどうだったのか、検証する必要はある。そして、そこから学ぶべき教訓を引き出すことが大事だ。
 
そのためには3人から直接、彼らがどういう情報を得て、どのような判断をし、どういう安全対策をして出発したかなどを聞いてみる必要がある。そのうえで、彼らの行動について総合的な評価ができる。
 
同時に、国の一連の対イラク政策が果たして適切なものであるか、そうした政策が彼らの活動にどのような影響を及ぼしたかについても総合的に検討したうえで、民間人の行動に関する自己責任と政府の責任にあり方を、きっちり議論するべきだと思う。
 
しかし、3人の命が危機に瀕し、事実関係も未だはっきりせず、彼らが何の弁明も説明もできない状況の中で、彼らの「自己責任」を云々することはフェアではない。 


もし今の状況下で、読売新聞があくまで「テロが頻発している」→「イラク入りしたのは無謀」→「本人が悪い」と決めつけるならば、同新聞は1991年6月に雲仙普賢岳の噴火災害で自社のカメラマンが亡くなった件についても、カメラマンと編集部の「無謀」を糾弾しなければならない。

なぜなら、当時火砕流は「頻発」しており、火山の専門家からの「警告」も出ており、行政の「避難勧告」も発せられていた。そんな中で発生した大火砕流によって、読売新聞社のカメラマンと彼が乗っていたタクシー運転手も死亡した。このタクシー運転手は、問題の大火砕流が発生する前に同僚から無線で早く逃げるように促された時に、「自分だけ逃げられない」と答えている。
 
そして、彼らの遺体を収容するために、火砕流が頻発する危険な中を、自衛隊員が命がけで現場に入った。遺体の収容作業中にも、大規模な火砕流が発生し、自衛隊員たちがあやわ、という場面もあった。
 


私は、読売新聞社を始め、当時現場にいたメディア関係者は結果として判断ミスを犯したと思う。それは教訓として、私たち取材者が共有すべき財産として、生かすべきものだ。
 
その一方で、ギリギリの状況まで被写体にカメラを向け、火砕流に襲われながらそのカメラを体で守り、最後に撮った写真を守ったそのカメラマンのプロ意識に、私は心を打たれたし、その姿を記録に止めたいと思って原稿も書いた。
 

読売新聞社もまた、カメラマンの最後の写真を大々的に掲載し、その死を悼んだ。自己責任だから、自衛隊員を命の危険にさらしてまで遺体を収容しなくていい、などとは言わなかった。
 
当然だろう。しかし、今回の社説を是とするならば、読売は自分たちのカメラマンの死についてこう書かなければならなくなる。
 
読売のカメラマンは火砕流に巻き込まれたのではなく、自ら危険な地域に飛び込み、あの事態を招いたのである。しかも、タクシーの運転手まで巻き添えにしたのである。自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動が、政府や関係機関などに大きな無用の負担をかけたことを深刻に反省する、と。
 

これは私の意見ではない。私自身は、いろいろ教訓にすべき点はあるとしても、最後まで現場で被写体と格闘していたカメラマンの思いを尊いと思う。なのに、読売の論説流に考えると、その尊い志までが、こんなふうに貶められてしまう。
 

身内に対しては思いやりがあり、最も人の情に篤いと思っていた新聞社が、今回の件では事実関係も明らかにならないうちから、被害者を論難するような決めつけをしたことが、本当に悲しい。いつから日本のメディアは、自分に直接縁のない者に対して、こんなにも冷たくなってしまったのだろう。
 
また産経抄は、以前私がいろいろと危険な中でもオウム真理教を追及したと、とても褒めてくれたことがある。そのコラムがなぜ、フリーのジャーナリストは「週刊誌に写真や記事を売り込む」などという嫌味な書き方をするのだろうか。
 

彼らの行動が、本当に「無謀で軽率」なのかは、実際にどういう判断に基づいてどのような行動をとったのか、分ってからでなくては論評できないではないか。
 
こうしたメディアは、心配している家族の目に触れるかもしれない。にもかかわらず、「いわぬこっちゃない」などと刺激的な文言を使うのは、どういう神経だろう。

・・・・

いわゆる「自己責任論」について
http://www.egawashoko.com/menu4/contents/02_1_data_28.html
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by mudaidesu | 2005-12-03 01:11 | イラク人質事件
イラク人質問題 3  またまた & 政府のせい!?


またまたです。

ドイツ人女性、イラクで拉致 親米路線阻止目的か? 11/29 朝日新聞 

こちら↓はその前の事件の続報。

バグダッドで拉致の4外国人、アルジャジーラが映像放映 11/30 朝日新聞

こんな話も。↓


これに対してCPT(被害者が所属する組織)シカゴ事務所のスタッフは、「4人はスパイなどではない。献身的な平和活動家だ」と反論。CPTはさらに文書で、4人の解放を訴えると共に、「米国と英国の政府がイラクを違法に攻撃し、占領を続け、イラク国民を抑圧し続けているせいで、私たちの仲間が今回のような目に遭っていることに、憤りを覚える」とコメントを発表した。

CPTはイラクで、米軍拘束施設での人権侵害について、拘束者家族から聞き取り調査をするなどの活動を展開しているという。

CPTはコメントで「欧米メディアはアブグレイブ刑務所での実態を認めるはるか以前から、米軍によるイラク人の拷問を最初に公式に非難した」のはCPTだと強調している。

イラクで拉致のキリスト教組織スタッフ、人質ビデオ公開 11/30 CNNジャパン



というか、CPTのホームページで↑の部分を見つけた。トップページでこんな声明出してます。


We are angry because what has happened to our teammates is the result of the actions of the U.S. and U.K. governments due to the illegal attack on Iraq and the continuing occupation and oppression of its people.

(米英政府がひでーことやってるせいで、こんなことになったんだよ!↑のCNNの記事にある)

Christian Peacemaker Teams (CPT) has worked for the rights of Iraqi prisoners who have been illegally detained and abused by the U.S. government.

(米政府によって違法に拘束され虐待されてるイラク人の権利のためにCPTは頑張ってきた。)

We were the first people to publicly denounce the torture of Iraqi people at the hands of U.S. forces, long before the western media admitted what was happening at Abu Ghraib.

(↑にある。)

We are some of the few internationals left in Iraq who are telling the truth about what is happening to the Iraqi people We hope that we can continue to do this work and we pray for the speedy release of our beloved teammates.

(我々は、イラクに残り、イラクで何が起こっているか真実を伝えてきた数少ない外国人のうちの何人かだ。今後も、この作業を続けたいと願ってる。仲間の早期解放を願ってる。)

Christian Peacemaker Teams
http://www.cpt.org/index.html


明確に、今回の出来事は米英政府のせいと言ってますね。そして、自分たちはイラクの人々の味方だと。ちなみに、私はこの団体を知りません。もちろん、実際にスパイである可能性はゼロではない。しかし、僕がイラク人質事件を語る文脈では、それは問題ではない。

トロント・スターという新聞によると、弱者を強者から守るのが使命の団体だとか。

Mission: To protect weak from the strong  Toronto Star


しかしながら、叩かれそうなコメントを堂々と発表するもんですね。「イラク人質事件 1  家族」では被害者のお父さんのコメントでしたが、今度は、被害者の所属する団体のものですね。

犯人を批判せずに英米政府を批判するなんてケシカラン!」とか。「ここぞとばかりに、しめたとばかりに、政府批判をするな!」とか「待ってました!とばかりに政府批判してる」とか。「事件を利用して政治的主張するな!」みたいなかんじで叩かれそうですね。

まあ、どこの社会でも叩いてる人は絶対にいるでしょうけど。

とにかく、こういう状況で犯人を批判しても意味ないでしょうにねえ。犯人についていくら文句言っても、被害者が助かるかどうかは関係ない。逆ギレされちゃヤバイし。↑のような主張した方が、多少は犯人たちが被害者に同情する可能性は高まるでしょうにねえ。
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by mudaidesu | 2005-12-01 00:50 | イラク人質事件


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