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菊と刀 日本人論
菊と刀  
ルース・べネディクト


日本人の安心・・・「予定通り」と思わせること。敗北であろうと失敗であろうと「想定内」と強弁して民衆を安心させた。

「日本人はあらかじめ計画され進路の定まった生活様式の中でしか安心を得ることができず、予見されなかった事柄に最大の脅威を感じる。」





「世界中の眼がわれわれの一挙一動の上に注がれている」・・・恥ずかしいことするな。見られてるぞ。

勇気・・・B-29や戦闘機に備えつけてあった救命具でさえ日本人から「卑怯」のそしりを招いた。生きるか死ぬかの危険を受容として甘受することこそあっぱれな態度で、危険予防策を取るのはいやしむるべきである。


乃木将軍とステッセル将軍の話。
日露戦争、ロシア降伏後、日本のロシア人に対する扱いは寛容だった。
なぜ、30年ちょっとで日本人は変わってしまったのか。
いや、変わってない。ロジックが違うだけ。

日本人はロシアに侮辱されたとは思ってなかった。見くびられたとは思ってなかった。
しかし、1920年代、30年代、アメリカには見くびられたと感じていた。「日本をくそみそに扱」ったと。。侮蔑が介在する局面とそうでないときの違い。


戦前、軍人はめちゃくちゃもてはやされた。しかし、戦後はさっぱり。冷淡。

日本人がこのような態度豹変をいかににがにがしく感じるかということを知れば、日本の名誉が軍人の手に委ねられていた昔の時代を回復するために、以前の戦友と徒党を組むことに彼がどんなに満足を覚えられるかは、用意に推察できる。


ちなみに、著者(文化人類学者)は一度も日本を訪れたことがない。


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この日本人論は戦後のアメリカ占領当局者たちのために書かれ、そして実際に活用されたよう。たしかに当時の水準からすれば、かなりのものだっただろう。そして、実際に、アメリカの占領は上手くいったとされている。

しかし、不思議なのは、この論は当時としては高水準だったとしても、今の水準なら「オリエンタリズム」という批判は免れないだろう。そのレベルの論でも、十分占領統治に役立ったのである。

でだ。イラクはどうなってんだ?現在のアメリカやイギリスの中東研究、イスラム研究の水準なんてしゃれにならないくらい高いだろう。「菊と刀」なんて屁でもないレベルだろう。

戦争前、多くの中東専門家が「やめとけ」と言っていた。その後も、こういう専門家たちの意見はまったく反映されてないのだろうか?戦争後、NHKはじめあちこちで、戦争前の統治戦略が甘かったという特集をやってたけど。あの状態のまんまなんだろうか。
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解説:川島武宜

本書は、元来、日本を征服し日本を占領統治するという戦争目的のために書かれたものではあるが、われわれにとっては無限の教訓の書である。本書において、事実を歪曲して自分の国に有利なことばかり書くように強制し、また敵国を子供じみたしかただ罵倒することしかしなかった国と、戦時中にかくも地味な科学的な敵国分析を着々としてやっていた国とのちがいをも、人は見落としてはならないだろう。
by mudaidesu | 2005-08-09 19:51 |


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